●元官僚の古賀茂明氏も「忖度だけでこんな違法行為はやらない」と断言
ちなみに近畿財務局の訪問回数は5回で他に電話でのやりとりもあった。国が大阪府に精力的に働きかけた結果、私学課の違法行為を招いたのは明白だろう。当然、違法行為の原因となったと考えられる近畿財務局の責任追及をするべきだが、大阪府は「違法行為ではない」と審査自体を処分対象にしなかった(厳重注意となったのは上司への報告不十分)。担当者からのヒアリングなどの調査すらしていない隠蔽体質の国への追及が及ばないようにしたと疑われても仕方がない。
松井府知事も私学課長の違法行為を否定、国の責任追及にも消極的だった。4月6日の囲み取材で「5回近畿財務局が訪ねていますが、国の圧力、働きかけが私学課長の決定に影響を与えたと理解していいのか」と聞くと、松井府知事はこう答えた。
「丁寧に対応をされている国に対して府職員としても『何らか応えてあげたいな』ということは人間として普通に思うことはありうると思います」「(近畿財務局の訪問は私学課長の)判断には影響しているけど、違法なことをやっているわけではなくて、私学課もそういう国の意見(文部科学省の2007年の規制緩和の通達)を受けて、『橋下知事時代と僕の時代の大きい教育改革の流れには沿っていこう』というふうな判断はあったでしょう」
大阪府私学課の違法行為を突破口にして、疑惑の本丸の財務省にメスを入れていく流れに対して、大阪府が「待った」をかけた格好になっているのだ。
先の古賀氏は、今回の財務省の対応を次のように見ていた。
「財務省は忖度だけではやらないなと思います。これは明らかにおかしいですから。僕は官僚をやっていたからよく分かりますが、こんなおかしなことを忖度だけでやることはあり得ない。万が一、政治家に裏切られたら本当にクビになりますから」(4日のトークショーでの発言)
昭恵夫人付の政府職員・谷査恵子氏が財務省に照会、妻の関与は明白なのに辞任しない嘘八百の安倍首相と同様、松井府知事もまた私学課の違法性を認めず、限りなく「黒」に近い対応を「白」と強弁して疑惑隠蔽で足並みをそろえたといえる。
籠池泰典前理事長の長男・佳茂氏はツイッターで「安倍先生と松井知事の連携プレー」「国と大阪府の大詐欺疑獄事件」と指摘したが、幕引きもこの2人の連携プレーと勘ぐりたくなるのだ。
さらに5回も面談をした近畿財務局と大阪府私学課の議事録が双方とも残っていないのも不可解だ。松井知事の定例会見で議事録作成をしなかったことも処分対象にならないのかと聞いたが、これも「問題ない」との回答だった。
筆者は4月5日の会見で、松井府知事に議事録を作成しなかった不自然さについて質問したが、「全部ね、議事録として正式に残せということになると、これは作業は大変です」「おたくが無理やり、『いろいろな不正があるのではないのか』という印象操作でものをしゃべられているけれども、そういうことには当てはまりません」と語気を荒めた。