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幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題

 本書に登場する中学3年生の中田智彦の両親は共にエホバの証人の信者だ。智彦は幼い頃からエホバの終末思想ハルマゲドン(地球滅亡)を叩き込まれて育った。その教えは現在、エホバ(神)がサタン(悪魔)と闘っており、近くエホバの勝利によって楽園「神の王国」が建設されエホバの証人だけが生き残れるというものだ。そのための活動として智彦は幼少期から母親に連れられ、知らない家への伝道訪問を繰り返した。

〈信者が親なら、わが子も楽園に連れて行きたいと願う。だが、エホバ神に気に入られる立派な二世に育てなければ、子どもは滅ぼされ、家族揃って楽園に行くことができない。そのために、炎天下だろうが吹雪の中だろうが、智彦がそうされたように、伝道訪問に子どもを連れて歩くのである〉

 エホバの証人が幼い子どもたちを連れ布教活動をするのは有名だが、しかしそれとて自身の意思ではないだろう。幼い心にハルマゲドンの恐怖を植えつけられ、しかも親に言われれば、従うのが子どもだ。さらに両親は教団の活動のため、定職につかず、経済的にも苦しい環境にあった。そして智彦は小学校5年生になった頃から、宗教活動に熱心でなくなる。そこで始まったのが父親の暴力だった。

〈集会に参加しなかったり、家庭での聖教研究に熱心でなかったり、節分の豆まきなど教団の戒律を破ったりすると、父親は智彦を布団叩きで叩いたり、拳骨で殴った〉

 これは智彦の父親だけではない。エホバの教えは体罰を容認するもので、エホバの子どもたちにとって暴力は日常茶飯事だった。時には皮のベルトや鉄のパイプや自転車のチェーンで叩かれる――。子どもを叩かないのは“悪い親”。智彦の父親はその教えを忠実に守っただけだった。そして智彦は中学2年生から不登校になった。

 それ以外にも、信仰は子どもたちに様々な影響を与える。母親が信者で、生まれたときから中学1年生まで二世信者だった19 歳の山口恵美の幼少期は過酷だった。エホバでは幼稚園や保育園は“サタンに毒されたこの世のかかわり”であり、それを嫌う。そのため恵美は社会から隔離されたような状況にあり、6歳まで弟としか遊んだ記憶がないという。エホバでは他にも誕生会、年賀状、クリスマスといった行事は禁止され、学校での学級委員や体育祭での騎馬戦、君が代斉唱の拒否などがあり、そのため周囲から白眼視されたりトラブルも起きる。しかもこれらを拒否するには、周囲に「エホバの証人だから参加しない」と言う“証”までもが義務付けられていた。恵美はこれが嫌だったという。

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