首相官邸ホームページより
世界中から非難を浴びているトランプ大統領の発した“入国禁止令”。しかし、この問題は、日本政府、そして安倍首相がいかに対米従属の“ポチ”であるかをさらけ出すものとなった。何しろ、国会で大統領令についての認識を質された安倍首相はこんな答えを返すことしかしなかったのだ。
「これは米国のいわば大統領令としての米政府の考え方を示したものであろうと思います。それについて、私がこの場でコメントする立場にはございません」
改めて言うまでもないが、トランプがイスラム教圏の7カ国の出身者の入国禁止や難民受け入れ凍結の大統領令に署名したことは、法の下の平等や信仰の自由を著しく侵害する暴挙としかいいようのないものだ。
しかも、それは現実的な政策としてもまったく整合性を欠いている。今回、入国禁止の対象としたのは、イラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの7カ国だが、1975年以降、米国人が殺害されたテロ事件の犯人に、これらの国の出身者は1人もいない。
一方、9.11テロの実行犯の出身国であるサウジアラビアや、トルコ、UAE、エジプトなどは、入国禁止対象から外れている。これは、サウジのホテル事業、トルコのトランプタワーなど、トランプがこれらの国でビジネスを展開しているからだ。ようするに、テロ防止といいながら、トランプの個人的な好み、利害関係で排除する国を決めているだけなのである。
しかも、ここにきて、トランプの排外政策が逆にテロを誘発するケースが出てきた。現地時間1月29日夜、カナダ・ケベックのモスクで6人が殺害される銃乱射テロが起きたが、地元紙「グローブ・アンド・メール」によると、この容疑者はトランプ米大統領とフランスの極右政党・国民戦線のルペン党首に傾倒していた疑いがあるというのだ。フランスとカナダの二重国籍の白人男子大学生である容疑者は、市民活動家の間で“ネット上のアラシ”(online troll)として知られた存在で、とりわけイスラム教徒のケベックへの移民を攻撃対象にしていた。そして、難民を非難したり、ルペンやトランプの支持を表明していたという。