少子化も安倍政権が目標とする「希望出生率1.8」とは逆行する結果となっている。厚生労働省が発表する2016年の人口動態調査累計では、統計開始以来はじめてという出生率100万人の大台を割り込む見込みだ。これは安倍政権の少子化対策が、なんら実を結ぶどころか、少子化がさらに進行しているということが、実際の数字によって証明された形だ。
また女性や子どもの貧困、とくにシングルマザーの貧困は深刻だ。2015年の厚生労働省の報告によれば母子世帯の母親の就業率は80.6%、しかしその平均年収は181万円にすぎない。さらに6人に1人の子どもが貧困という衝撃の数字が出て久しい。一方、安倍政権が推し進めるのが女性役員の登用だ。2016年、主要な東証1 部上場企業では半数以上が女性役員を登用し、“1億総活躍の政策が後押しした”と話題になったが、これにしても、安倍政権がいかに弱者ではなく“エリート層”を意識しているかがわかるだろう。持てるものや大企業、富裕層を優遇し、格差を固定化、拡大する。多くの女性が“これで女性が輝き活躍なんかできるわけがない”と思うのも当然なのだ。
これまで安倍首相は“1億総活躍”だけでなく“美しい国”(第一次)“輝く女性”“3本の矢”“戦後以来の大改革”“デフレ脱却”国民に耳触りのいいスローガンを掲げ、高い支持率のもと、強行採決を乱発するなどデタラメな政権運営を続けてきた。しかし、その内実は『あさイチ』で海野が看破したように国民に“国のための労働”を強制し、戦争さえ可能な破滅的政策を国民に押し付けているのだ。
今年4月から女性活躍促進法が施行されたが、しかしその背景には少子化による急速な労働力不足が指摘されている。つまり、安倍政権が女性に“活躍”などと言うのは、決して女性の自立を後押しするものではなく、ましてや“生き生きと輝いてもらいたい”わけではない。戦時中のように、国家の下支えのために働けということなのだ。
しかし多くの女性たちは、決して騙されてはいなかった。自分たちの生活に密着した育児や男女格差、貧困などの切実な疑問から、政治は動く。安倍政権は女性を舐めてはいけない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2018.10.18 01:55