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本名を変えてまで大企業に挑む! 「ユニクロ潜入ルポ」が話題のジャーナリストによる「アマゾン潜入ルポ」もすごい!

 偽名で働くことは潜入取材をするジャーナリストとしてできない、かといってユニクロにとって横田氏は訴訟沙汰までなった“憎き相手”。正体がバレれば解雇は必至だ。そのため横田氏は〈まず法律に則って名字を変え、「横田増生」をペンネームとした〉のだ。

 名前を捨ててでも現実を伝えたい──。横田氏のこの覚悟と度胸はまさにジャーナリストの鑑というべきものだが、じつは横田氏がこうした“潜入”取材をおこなうのは、今回が初めてではない。

 横田氏はかつて物流業界紙の編集長を務めた経歴から、アマゾン、佐川急便、ヤマト運輸などの物流会社にアルバイトとして潜入。それをルポ作品として世に出している。とくに世界的な巨大通販サイト・アマゾンに潜入した『アマゾン・ドット・コムの光と影』(情報センター出版局)は、アマゾンの雇用への姿勢、現在日本が直面する格差問題、そして旧来の出版流通や再販制度にまで踏み込み、多くの問題をあぶり出した作品だ。

 横田氏がアマゾンにアルバイトとして潜入したのは、いまから13年前。アマゾンが日本に上陸してから3年後の2003年11月から翌年3月までの約半年間だった。

 なぜ潜入という手法をとったのか。それはアマゾンという企業が、今回のユニクロ以上に閉鎖的で秘密主義ゆえに通常の取材が困難だったからだ。

 現場は、アマゾン社員をトップにした“カースト制度“によって、アルバイトの使い捨てがまかり通る、ユニクロ以上に管理が徹底された過酷なものだった。横田氏が働いた物流センターは1階と2階合わせて約1万5000平方メートルという広大な“職場”だ。そこで横田氏は本を探して抜き出すピッキングと呼ばれる作業をひたすらおこなった。ノルマは1分間で3冊。アルバイトの作業は厳重なコンピュータによる“監視”付きだった。

〈ここでは毎月個人の作業データを集計して“成績表”を作るのだという。データからはいつ誰がどんな作業をしていたのかがわかる。作業に間違いがあれば、さかのぼって“犯人”を探し出すこともできる。また、ノルマに達していないアルバイトには指導が行われ、それでも成績がよくならない場合は、二カ月ごとの契約更新時に、契約が打ち切られるという〉

 天井に設置された監視カメラ、ノルマと徹底した管理コストシステム──。本書ではこうした過酷な労働状況や出版流通の実情に迫っていくのだが、浮かび上がってくるのは、アマゾンの“実態”だけでは決してない。そこで働くさまざまな人々の“リアル”な姿だ。

 社員に怒鳴られてもうなだれるしかない30代の男性バイト。文句が出そうな場面でも不満の一つも口にしない多くのバイトたち。時給はどれだけ働いても900円で上がることはない。保険どころか、交通費も支給されない。そしてアマゾンで働くバイトは30代から50代が大半を占めていたという。

〈時折、茶髪にピアスといった若者が紛れ込んでくることもあったが、作業があまりに退屈なのか、一、二週間もするとたいていが姿が見えなくなる〉

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