〈経済産業省の文化情報関連産業課調査によると、四年前の資料だが、テレビアニメ番組制作のためスポンサーが支払った金額は、五〇〇〇万円。このうち、制作プロダクション(元請け)にまわってくるのが、十六%の八〇〇万円でしかない。残りの四二〇〇万円、八四%のうち、広告代理店が一〇〇〇万円、テレビ局(キー局が一二〇〇万円、残りの二〇〇〇万円を各地方局)が取る〉(前出「週刊金曜日」)
このわずか800万円のなかから、まず元請けの制作プロダクションがマージンをとり、その後に下請けの作画会社や編集会社、声優のギャランティへと回っていく仕組みとなっている。これでは末端スタッフまでお金が行き渡らないのは当然だろう。
そんななか収益を得るための頼みの綱は、放送や上映が終わった後に発売されるDVDなりブルーレイなりの映像ソフトの売り上げだった。しかし、最近ではそれすらダメになりはじめている。昨年7月に行われたイベントで庵野氏はこのように語っている。
「テレビシリーズでも劇場アニメでも作るのに結構お金がかかる。劇場アニメだと億単位でかかってくるので、資金を集めるのも大変ですが、元を取るのはもっとたいへん。今の製作委員会方式というのはソフトの売り上げを見込んで制作費を回収するようにできていたんですが、そのソフトが売れなくなってしまった」
ソフトが売れなくなった理由はいくつかあるだろう。違法アップロードのかたちで動画がネット上に溢れていること、ダウンロードやストリーミングでの視聴に慣れた若い世代にはソフトを持ちたいという所有欲がそもそもないこと、単純にアニメ作品の本数が多くなり過ぎていることなどだ。
先日、帝国データバンクが発表した、アニメ制作会社153社の経営実態調査によると、14億円超を記録した06年度をピークに平均収入高が大幅に減少しており、09年度には約10億円まで下落。14年度まで横ばいのまま続いている。急激な下落の要因には、やはりソフトの売上頼みだったビジネスモデルの崩壊などが挙げられている。
日本のコンテンツ産業の主役はアニメであり、それはこれからも変わらないだろう。しかし、こういったブラック労働の常態化により、現在若手のアニメーターが育っていない問題が指摘されている。同時に、海外への外注による産業空洞化も危惧されはじめた。この状態がこれからも変わらなければ「クールジャパン」なる国策は間違いなく露と消えてしまうだろう。
(新田 樹)
最終更新:2018.10.18 04:22