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家父長制復活狙う日本会議が「サザエさん」を使い家族条項新設を喧伝! でも「サザエさん」ってフェミなんですけど

 この点を指摘しているのは、作家の故・寺山修司。寺山は「映画芸術」70年11月号に寄稿した「サザエさんの性生活」と題した論考で、〈サザエさんのエロチシズムへの無関心と「家」への忠誠が、一日一妻の死ぬまでのものだとするあきらめから出発していることが、この漫画の最大の特色であると考えている〉と批評。サザエとマスオの性生活をこのように分析するのだ。

〈サザエさんは月にほんの一、二回、正常位で性行為をいとなんでタラちゃんを生み、その後は聖書でいましめるように「出産を目的としないようなセックスの快楽」からきっぱりと足を洗い、もっぱら食欲の方に生甲斐を向けるようにした。しかし、こうしたことから、結婚そのものが「社会の生産手段の私有化としての経済基盤だけを問題にする」ようになっていき、形骸化したサザエさんとマスオの夫婦生活を作りあげるにいたったのである〉

 もちろん、タラちゃん誕生の体位が正常位か否かを長谷川が描写しているわけもなく、完全なる寺山の妄想なのだが、ここから〈手淫常習癖のマスオを性的に解放〉する〈一夫一妻という権威主義家庭の抑圧から自由になってセックス・レボリューションを体現〉するための処方箋まで提示している。

 漫画の『サザエさん』が連載スタートしたのは、1946(昭和21)年のこと。時代の空気を著者の長谷川はその折々に漫画へ反映してきたが、現在放送されているアニメ版はパートの一件をとっても、そうした時代性の反映に失敗しているようにも思える。いや、『サザエさん』というフォーマットに時代のエッセンスを加えること自体が、もうすでにムリな話なのかもしれない。

 なのであれば、堀川くんのような脇キャラで歪みを演出するくらいなら、漫画版においてサザエさんが見せた“行動する女”像を、いまこそアニメでも取り入れたらどうか、と思うのだ。そして、最大のタブーたるサザエさんのセックス・レボリューションも描いたら、それこそ現代性が生まれるのではないか。……まあ、サザエさんの性事情をどれだけの人が知りたいと思っているかは謎ではあるのだが、堀川くん以上に盛り上がることは間違いない。
(大方 草)

最終更新:2018.10.18 04:35

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