しかし気になるのは、なぜこのタイミングでこの情報が出てきたか、だ。「また官邸=内調の仕掛けか?」と思いきや、そうではないらしい。須田氏の情報源はさだかではないが、前出の政界関係者によると、もともとこれを調べていたのは、民進党の支持母体である連合だというのだ。
「幹事長人事や新潟県知事選をめぐって、蓮舫代表と連合の亀裂はいま、決定的になっています。それで、連合は自民党に秋波を送る一方で、蓮舫おろしを画策。関係者がこの問題を聞き回っていました。おそらくその過程でマスコミに流れたのかもしれません」
労働貴族・連合の権力補完体質にはいつもながらうんざりさせられるが、これはその連合に依存し、リベラル勢力を結集する覚悟をもてずにいる民進党も同様だ。野党第1党がこんなゴタゴタを繰り返していては、メディアを支配し独裁体制を着々と築き上げる安倍政権に対抗できるわけがないだろう。
実際、官邸がこの蓮舫氏の疑惑と民進党の混乱に一気に乗じて、11月解散にもち込むのではないか、という見方も流れている。
「もともと官邸は代表選の段階で“二重国籍”とともに、総統選投票の噂を把握していたんですが、そのときはこの噂を流さなかった。むしろ、官邸としてはレームダックになった蓮舫体制が続いたほうが得策と判断したためです。この噂は解散直前の一番いいタイミングで流そう、ということですね。それが、ここにきて別ルートで流れ始めたので、官邸は逆にこれに乗じて一気に11月に解散にもっていこうとするのではないか、という見方が流れています」(前出・政界関係者)
マスコミは1月解散などと騒ぎ立てているが、実は官邸と二階俊博自民党幹事長の間では最近、1月ではなく11月解散がひそかに検討されていた。というのも、北方領土返還交渉がまったくうまくいっていないからだ。
「1月解散はプーチン大統領の12月15日来日で、北方領土返還に道筋がつき、その成果を宣伝して、というのが前提の作戦でした。しかし、実際に交渉してみると、ロシアは経済協力だけ引き出して北方領土を返還する気なんてまったくないことがわかった。プーチン来日後の1月に選挙をやると、逆に国民に失望感が広がり、自民党が負ける可能性が出てきた。それで、まだ返還交渉に期待があるいまのうち、民進党がゴタゴタしているうちにやってしまえ、という意見が出てきたのです。安倍首相がペルーでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)から帰国したすぐ後に解散して12月中に投票という具体的なタイムスケジュールまで検討されていた。結局、それは流れましたが、今回の問題で、一気に再燃する可能性はあるでしょうね」(全国紙政治部記者)
もしそんなことになったら、民進党が壊滅状態に陥るのは必至だ。謀略によって安倍政権だけがどんどん肥え太る。この国の政治状況にはもはや絶望しかないのか。
(田部祥太)
最終更新:2016.11.04 03:11