「甘利元大臣の現金授受を告発したブローカーも、うちの記者がフィリピンパブとかにとことん付き合って信頼を勝ち得て、初めて全部しゃべってくれた」
怪しいネタ元との付き合いに、フィリピンパブ――。コンプライアンス全盛の時代に、グレーゾーンに踏み込んでもネタを取ろうとする姿勢はさすがだが、「週刊文春」の凄さはその勇気だけではない。12年、大阪市長だった当時の橋下徹氏が不倫相手に「スチュワーデス」のコスプレをさせたという記事を例に出し、いかに訴訟に耐えられるような緻密な取材をしているかを明かしている。
「橋下さんが不倫相手の女性にあげたネックレスの販売店に行って、当時の伝票をひっくり返してもらったり、ラブホテルに行って実際にスチュワーデスのコスプレ衣装があったか調べてもらったりして」
とまあ、この対談ではこうした“文春砲”の凄さを物語るエピソードが次々出てくるのだが、それとは別に、もうひとつ驚きの事実が暴露されていた。
「実は『ジャニーズ女帝怒りの独白5時間』という記事を出した後、メリー(喜多川)さんが『編集長に直接話がある』と、うちの会社に来たんです」
なんと、メリー喜多川副社長が直々に「週刊文春」編集部に乗り込んできたというのだ。
原因は、新谷編集長の言うように、昨年1月に掲載され、SMAP解散の引き金となったメリー副社長独占インタビュー「ジャニーズ女帝怒りの独白5時間」。実はこの記事、もともとは派閥問題について質問状を送った記者とデスクがメリー氏に事務所に呼びだされ、5時間にわたって軟禁状態で罵倒され続けた模様を「文春」が「インタビュー」と称して出したものだった。メリー氏はその取材手法や記事の作り方への抗議に来社したのだろう。
たしかに、メリー副社長はこれまでも、気に入らない記事を出したスポーツ紙に突然電話をかけてきたり、スキャンダルを書いた週刊誌記者を乃木坂の事務所に呼び出したりすることで知られていた。その迫力はすさまじく、時にバンバンと机を叩いて「殴るぞ」と凄み、時には暴力団や同和団体との関係をちらつかせるなど、百戦錬磨の週刊誌記者も震え上がるものだともいわれていた。
「さらに有名なのが、“恐怖のメリークイズ”といわれる逆質問で、たとえば、記者にジャニーズのタレントを偉い順から言えなどと、難題を浴びせるんです。それで記者が答えに窮すると、『そんなことも知らないで記事を書いたのか』と罵倒が始まる。しかも、話がどんどん移っていって、いつまでたっても帰してくれない。芸能記者にとっては恐怖の体験のようです」(女性週刊誌記者)