しかも、もっとヒドいデマは、池田氏が山内アナに対して「国籍を失う」など脅していることだ。改めて指摘しておくが、同法15条第3項は国籍選択をせず、法務省からの催告にも応じず、1カ月を経過したものに対する条件文であって、日本国籍を選択した山内アナが、「日本国籍を失う」なんてことがありうるわけがない。こんなことは小学生にだってわかるだろう。
おそらく、池田氏は、同法の「国籍選択」について規定した15条と、「日本国籍選択後の外国籍離脱」についての“努力規定”である16条を混同しているのだ。
同法16条は《選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない》(第1項)というものだが、これは文言が示しているとおり“努力規定”であり、罰則はない。そして、同条第2項を読めば、国籍の喪失がありうるケースはごく限定的な場合であることがわかる。
《2 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失っていないもの が自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であっても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。》
いずれにしても、日本国籍を選択したある人間が、なんらかの理由で重国籍者だとしても、自動的に日本国籍を喪失するわけでは決してない。
ようするに、池田氏は常識的に法令を読めば簡単にわかる話なのに、ありえない解釈にもとづいて、「日本国籍を失う」「普通は解雇」などとドヤ顔で言いふらしているのだ。しかも、17日にも〈山内アナはまだ自分の二重国籍状態を放置してるのか。「努力義務」を怠ると、日本国籍を失うよ。TBSのコンプライアンスは大丈夫?〉などと恥ずかしげもなくデマを垂れ流し続けている。
加えれば、池田氏はツイートで、山内アナが「二重国籍は問題ない」と発言したとするが、実際には、山内アナは放送中に「二重国籍自体は問題があるわけではないんですよね?」と堀尾アナや出演者の飯田泰之明治大学准教授らに向かって質問しただけだ。難癖にすぎない。
ここまでくれば、もう明らかだろう。池田氏の〈二重国籍者がカミングアウト。普通は解雇〉などという一連のツイートは、明らかな人種差別の意図をもって流されたデマである。そして、重国籍者バッシングに血眼になっている右派言論人や右派メディアの根っこが、グロテスクな純血思想と排外主義、差別主義に他ならぬことを証明したかたちになる。