Kダブシャイン『自主規制』(ワーナーミュージック・ジャパン)
今年6月、野外ロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL’16」にSEALDsの奥田愛基氏の出演がアナウンスされたことをきっかけにインターネットで巻き起こった「音楽に政治を持ち込むな」論争。
当サイトではこの問題を何度も取り上げ、ポップミュージックが歴史的に見ても、貧困への怨嗟や体制への反抗と不可分であること、「音楽に政治を持ち込むな」などという意見こそが音楽の本質をわかっていない偏狭な考え方であることを指摘してきた。
ただ、当のミュージシャンたちはこの問題にあまり積極的に触れようとはしておらず、目立ったところでは、ヒップホップのパイオニアであるいとうせいこう、ロックバンドASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が以下のような発言をしたくらいだった。
「海外では逆に政治的な意見を言えない奴はバカにされるし、それが当たり前の音楽のあり方だと思うよ。(略)音楽と政治が関係ないなんてノンキな事を言ってる場合じゃない状況になってて」(いとうせいこう「BRODY」2016年10月号/白夜書房より)
「今は思ってることをちょっと言うだけで、すぐ活動家みたいに言われちゃうけど、そうじゃないだろうと。そういうのはフツーに言おうぜって」(後藤正文「ミュージック・マガジン」16年8月号)
そんな中、「音楽に政治を持ち込むな」の論調にはっきり異議を申し立てるミュージシャンが現れた。その人物は、Kダブシャイン。Zeebra、DJ OASISとともにラップグループ・キングギドラで1995年にデビュー。「日本語によるヒップホップで韻を踏む」という現在では当たり前となっているメソッドを最初に確立した人物であり、格差問題やメディアタブーなどをテーマにした社会性の強い楽曲を多く発表していることでも知られている。
そんなKダブシャインが「SPA!」(扶桑社)の上杉隆連載「革命前夜のトリスタたち」に登場。批判を恐れて口をつぐんでしまうミュージシャンたちを批判している。
「アメリカのMTVを観て育ったので、アーティストが表現の自由を大切にし、権力への反発や束縛からの解放を当然のこととしているのを知り、感化された。でも、今の日本のアーティストは自主規制を当然と考え、事なかれ主義……。本来、音楽はもっと反抗的であって然るべきなんですよ」