もっとも、この日の『あさイチ』で、古舘はひとつだけ興味深い発言をしていた。それは、今後の仕事について語った時だ。古舘は、『報ステ』のキャスターになる前のように、バラエティの仕事やスポーツ関係の仕事など、いろいろな仕事をしたいと語りながら、こんな言葉を付け加えたのだ。
「『報道ステーション』を12年やったってことは、良い意味でも悪い意味でも、もう取り返しつかないんで、自分のなかに血肉として入ってるんで。報道の真ん真ん中の『報道ステーション』の総合司会みたいなことはできませんけれども、報道まわりみたいなところでもうちょっとカジュアルにしゃべったりすることは是非やらせてもらいたいと思ってるんです」
古舘が報道に関係した仕事をやりたいと発言するのは、『報ステ』降板後、はじめてのことだろう。『報ステ』から離れて5カ月、古舘は再び、ニュースにかかわりたいと思い始めているのではないか。
しかも、「報道まわりみたいなところ」「報道のど真ん中よりもうちょっとカジュアルにしゃべれるところ」というのは、ワイドショーの司会者を意識した発言だ。
たしかに、古舘がワイドショーの司会をやるというのはアリかもしれない。というのも、今のワイドショーはほとんどが、強いものに媚び、弱いものいじめに血道あげる下劣な扇動ショーと化しており、政治的にも安倍政権の問題点から国民の目をそらすどころか、政権の宣伝役を担う存在に成り果てているからだ。
たとえば、安倍擁護はもちろん韓国ヘイトのようなコメントまで平気で口にする『とくダネ!』(フジテレビ)の小倉智昭、安倍首相出演の際には見るに堪えないようなヨイショを繰り広げた『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ)の宮根誠司、安倍首相の寿司友だち、田崎史郎の政権PRを有り難がって拝聴するだけの『ひるおび!』(TBS)恵俊彰、権力や大物芸能人の不祥事は一切スルーする一方で、軽微な不正を自慢げに叩く『スッキリ!!』(日本テレビ)加藤浩次、そして、ジャーナリストのような顔をしつつ実際はもっとも権力に媚びる司会進行をする『直撃LIVE グッディ!』の安藤優子……。彼らの代わりを、古舘がつとめ、『報ステ』で見せたような安倍政権への切り込みを見せてくれたら、今の閉塞した政治状況も少しは改善されるだろう。
もっとも、一方では、今の古舘にそこまで期待できるのか、という懸念もある。このところの古舘を見ていると、それこそニュースから解放されたはしゃぎっぷりばかりが目立ち、骨のある反権力的なスタンスがまったく感じられないからだ。
古舘は『あさイチ』で、「『報道ステーション』のときは、真ん中に座っている限り、やっぱりバランスをとった発言をしていかないといけない。(でもいまは)若干は自由に言える立場になっていると思うし」と語っていたが、それはたんにくだらないギャグを連発するようになっただけで、同番組での発言を見てもわかるように、政治的にはむしろ『報ステ』のときよりもずっと周囲の空気を読んで慎重になっている気さえする。
ワイドショーの司会をやらせてみたら、宮根とたいして変わりはなかった、という結果にならなければいいのだが……。
(井川健二)
最終更新:2016.08.09 07:06