続けて彼は香西氏に「夢」を尋ねた。彼女の夢は雑貨店を開業することだったのだが、その店への出資を約束するとともに、週に1回、香西氏の将来について話し合う90分から2時間の面談を行うことになったのだと言う。その「面談」は「洗脳」に他ならないものだった。
「週一の面談で青木は、畳み掛けるように問いかけてきました。『何歳で何をしている?』『その時の年収は』『どこに住んでいる?』『私生活は?』と。成功した未来像を具体的に次々とイメージさせていくのです。次にいま何が足りないのかを分析し、戦略を練るのです」
度重なる「面談」の結果、話題性のある女社長となるために、まずタレントとしての成功を目指すことになったのだが、それらはすべて青木氏の思うつぼだった。というのも、青木氏はマークスインベストメントの社長である他に、AVプロダクション・アットハニーズのオーナーでもあったからだ。
青木氏は、未来設計を考えるための「ビジョンブック」なる、目標やそれを叶えるためにするべきことを書き出したノートを10冊以上も香西氏につくらせ、どんどん洗脳を完成させていった。その過程で「目的のためなら手段を選ぶな」「これからは中国だ。そして中国で最も人気があるのは「セクシー女優」だ」「モニカ・ベルッチやシャロン・ストーン、日本ならば土屋アンナや菅野美穂、みんな脱いで成功した」などという考えを彼女に刷り込んでいく。「AV」という言葉こそ使われなかったものの、度重なる「面談」のなか、香西氏はカメラの前で脱がなくては成功はないというように思い込まされていったのである。
さらに、青木氏は「プロモーター」や「相談係」と称する自分の息がかかった人物を次々と香西氏に送り込んでいき、これまでの彼女の人間関係を壊そうと画策する。
「気がつけば当時の私の人間関係は、青木氏とその関係者が全てになっていました。『否定的なことを言う人間とは連絡をとるな』と言われ、友人や家族とは疎遠に。同棲していた恋人と別れて、青木氏の関係者の勧めで引っ越しもした。けっきょく、相談相手は誰もいなくなってしまいました。でも、囲い込まれたという自覚は全くありませんでした。自分を応援してくれる人たちに囲まれている充実感すらありました」