しかも、今回は巨大地震が2度も連続して起こるという前例のない想定外の事態が起きている。こうした事態を前に、何がともあれ万が一の事態に備えて一旦、原発を急停止するというのが国民の安全を守る立場にある政府や電力会社がまずとるべき行動ではないのか。
想定外でももう一度原発事故を起してしまえば、国民の生命、財産が危険に晒されるだけでなく、日本という国さえ滅びてしまうほどの事態になる。目先の“再稼働への影響”といった利害を優先させれば、それこそ国家的危機が待っている。
しかも、川内原発は地震の想定が甘すぎるまま再稼働に踏み切られたものだ。九州電力は、川内原発の再稼働に際して地震発生時の対策所を置く免震重要棟を今年3月までに建設するとし、原子力規制委員会の審査でも再稼働の前提とされていたが、九州電力はこれを昨年12月に撤回。このとき九州電力は、『報道ステーション』(テレビ朝日)の取材に対し、「電力会社の社員は管理部門をはじめ、地震が起きても平常心を維持できるよう特別な訓練を重ねている」と、話にならないコメントをしていた。
免震棟以外にも数多くの問題がある。まず「基準地震動」(想定される最大の揺れ)の新規制のガイドラインでは、「内陸地殻内地震」「プレート間地震」「海洋プレート内地震」について検討し「基準地震動」を科学的に作らねばならないとしている。しかし九電は、内陸地殻内地震しか検討せず、プレート間地震と海洋プレート内地震を無視しするなど過小に設定、正しい検討手続きを踏んでいなかった。
また、耐えられる地震の大きさについても、川内原発が再稼働にあわせて策定した基準地震動は620ガル。しかし、16日の地震では、益城町でその約2.5倍に当たる1580ガルの加速度が測定されているのだ。
もうひとつ、重要なのは、火山リスクの過小評価だ。川内原発は、火砕流の到達距離とする150km圏内に14の火山、5つのカルデラがある。とくに、姶良カルデラという巨大火山にはきわめて近く、噴火した場合、川内原発に火砕流が及ぶことは九電も認めている。
ところが、九電も規制委も、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないとして立地不適にしなかったのである。
審査では火山の専門家は一人も意見を聴取されておらず、火山学者の多くは、数十年の間に噴火しないとは科学的に言えない、と疑義を呈している。九電側はカルデラ噴火が6万年間隔だとしているが、これはただ平均を出しただけで、火山学的はまったく根拠のないものだ、とも指摘されている。