しかし、タックスヘイブンを使った租税回避行為はけっして、「節税」などではない。個人はもちろんのこと、法人設立の場合でも、日本国内で本来負担すべき税金を逃れていることには変わりはない。租税負担の公平性の原則からすると、明らかに問題があり、直接取り締まる法律がないだけで、限りなく不法行為に近いといっていいだろう。
しかも、タックスヘイブンでは実体のないペーパーカンパニーを設立することができ、脱税や粉飾決算、資金洗浄の温床になっているのだ。
6日、パナマ文書をリークした人物「John Doe」(身元不明の人物を表すときに一般的に使われる仮名)が声明文を出したが、この中でもパナマの法律事務所モサック・フォンセカのやっていることは「不法行為」であると明言し、司法当局がパナマ文書を分析すれば、「何千件も起訴されることになる」と指摘している。
「デジタル化する革命(The Revolution Will Be Digitized)」と題された1800
語に及ぶこの声明文で、告発者は、所得の不平等が現代の特徴的な問題のひとつだとして、「文書の内容について十分に知るうちに、そこに描かれた不正の規模に気付いたため」と、パナマ文書を公開した目的を語り、「直接雇用であれ業務委託という形であれ、いかなる政府や情報機関のためにも働いておらず、過去にもそうしたことはない」と特定の政治目的やスパイ説も否定している。
そして、パナマ文書が単なる「合法的な」スキャンダルに矮小化されているとして、こう憤るのだ。
「これまでの支配的なメディアの言説は、制度のなかで許されてきた合法的なスキャンダルにばかり焦点をあてている。たしかに、許されている行為でもスキャンダラスであれば、変わらなければならない。しかし、私たちはもう一つの重要な視点を失ってはならない」
「もう一つの重要な要素とは、(パナマ文書を作成した)法律事務所の創始者、従業員らが世界で無数の違法行為を繰り返し行っているということだ。彼らは知らなかったと公然と弁解するが、パナマ文書は詳細を承知の上だったこと、故意の不法行為だったことを明らかにしているのだ」
「彼らは特別扱いをされることなく、適切に訴追されるべきなのだ」
告発者はスキャンダルどころか、国際的な刑事事件だと告発しているわけだ。しかし、日本のだらしないマスコミにこうした不正を本当に追及する覚悟はあるのだろうか。
すでに、菅義偉官房長官は「政府としては調査しない」と明言し、マスコミをけん制。マスコミの側も、前述したようにICIJのパナマ文書分析プロジェクトに参加している共同通信ですら、明らかに及び腰になっている。このまま尻すぼみにならないことを祈りたいところだが……。
(小石川シンイチ)
最終更新:2016.05.10 08:11