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急死した元朝日・若宮啓文にネトウヨと百田尚樹が「ざまあみろ」と攻撃!「安倍叩きは朝日の社是」はデマなのに

 そもそも、この「安倍叩きは朝日の社是」デマの発端は、自民党総裁選直前の2012年9月に出版された『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)という一冊の本にある。報道圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」事務局長である自称文芸評論家・小川榮太郎氏のデビュー作で、安倍氏の人柄や政治家としての素質と功績をひたすら称揚する“安倍礼賛本”だ。

 同書は、無名の「文藝評論家」による処女作にもかかわらずベストセラーとなり、安倍首相復権の第一歩につながったと言われる。だが、以前本サイトでお伝えしたとおり、この本は安倍氏とその応援団の仕掛けによって世に送り出されたものだった。事実、安倍氏の資金管理団体である晋和会が数百万円分も“爆買い”していたことも判明。はなから、安倍待望論の世論形成のためのツールだったのだ。

 実は、同書が安倍氏のイメージ回復のため、まっさきに矛を向けたのが、朝日新聞だった。小川氏は冒頭で、「安倍の葬式はうちで出す」と朝日幹部が発言したとして、〈この「大新聞」の安倍への憎悪は、本物だった〉と書く。そして、安倍氏再登板運動を牽引し、同書の中心的仕掛け人でもあった政治評論家・三宅久之氏から〈次のような話を聞いたことがある〉と切り出す。

〈朝日新聞論説主幹の若宮啓文と会った時ね、「朝日は安倍というといたずらに叩くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか?」と聞いたら、若宮は言下に「できません」と言うんですよ。で、「何故だ?」と聞いたら「社是だからです」と。安倍叩きはうちの社是だと言うんだからねえ。社是って言われちゃあ……。〉

 しかし、この「証言」は、小川氏が同書の中で〈ちなみに右記の発言を私は当人達に確認していない。確認するまでもないのだ〉と開き直っているように、なんの裏付けもないもの。当然、録音テープやメモなどの物証も存在しないだろう。もっと言えば、そもそも小川氏は三宅氏の“子飼い”と呼ぶべき弟子であり、証言者と取材者との関係を考えると、客観性がまったく担保されていない。つまり、どう小川氏に好意的に捉えたとしても、せいぜい“都市伝説”レベルの記述にすぎないのだ。

 にもかかわらず、『約束の日』発売から数日後、なんと、これまた安倍応援団の筆頭株である阿比留瑠比記者が、産経新聞ウェブ版で同書にある三宅氏の「証言」をモロに紹介した書評を掲載。しかも〈安倍叩きは「朝日の社是」〉と見出しを立てて、〈(朝日は)政治的意図をあらわにしたプロパガンダ機関というべき〉などと騒ぎ立てたものだから、ネット上で瞬く間に拡散した。その後も、百田氏など安倍応援団がさかんに「有名な話」として引用しまくったことで、右派論壇やネトウヨ界隈を超え、いつの間にかさも“事実”であるかのように流通してしまったのである。

 しかも最悪なのが、当然のように安倍首相もこの“噂”を政治利用したことだ。安倍首相は、14年10月30日の衆院予算委で、暗に若宮氏を指して「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としているとかつて主筆がしゃべったということです」などと述べ、朝日を“捏造メディア”と攻撃。もちろん、その年の慰安婦報道訂正に端を発した一連の“朝日バッシング”に、油を注ぐ意図があったのは間違いないだろう。

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