国会議事堂炎上事件の翌日、ヒンデンブルク大統領の署名のもと、「国民と国家を防衛するための大統領令」を発令。これは言論や集会・結社の自由など、国民の基本的人権のほとんどを失効させるものだった。さらに、その日のうちに、ドイツ共産党関係者が逮捕された。そのなかには、ほとんど共産党とつながりのない作家や芸術家などの知識人もいたという。続いて、ドイツ共産党とドイツ社会民主党の機関紙がまとめて発禁処分を受けた。だが事件の夜、ドイツ共産党の武装蜂起と判断できるような動きは警察の記録にも一切存在しなかったという。そして、翌月、総選挙を経て反対勢力を国会から追いやったヒトラーは全権委任法を成立させた。国会でドイツ社会民主党の党首からその「迫害」を批判されたヒトラーは、こう反論したという。
「貴君は迫害とおっしゃる。(略)さらに貴君は、批判は有益であるともおっしゃる。たしかにドイツを愛する人であれば、私たちを批判してよいだろう。けれどもインターナショナルを信奉する者に、私たちを批判することはできない!」(前掲書より)
「日本を取りもどす」の御旗のもと、批判する人たちを「反日」として攻撃する、安倍首相の姿そのものだ。先日本サイトでもお伝えした国家緊急権、すなわち自民党が改憲で新設を目論む緊急事態条項についても同様だが、今回、破防法をもち出して共産党を攻撃したのも、まさにヒトラーの手法と重なる。
また、現在は、夏の衆参同日選の可能性が高まっている。ここにきて、安倍首相は一気に9条第2項を争点にするという見方が現実味を帯びてきているという。
「緊急事態条項もそうだし、公明党に配慮した環境権、はたまた発議要件を変更する96条など、安倍首相が在任中に国民投票であれもこれも一気に変えるとなると、さすがに政権は体力がもたない。だったら、最初からいきなり9条2項の戦力の不保持と交戦権の否定をやってしまおうということみたいです。実際、首相に近い議員からは、そのプランをしきりに安倍首相に進言していると聞きます」(前出・政治部記者)
現状、9条の護持をもっとも強く掲げる共産党に対し、露骨な反共キャンペーンを行った理由は、決して安倍首相の頭の中が冷戦時代で止まっているとか、そういう話ではないのだ。名実ともに独裁に突き進む安倍政権。最後に「待て」をかけることができるのは、やはり国民の声しかない。
(梶田陽介)
最終更新:2016.03.27 09:08