ヘアメイクとして過去のキャリアを活かすことのできたケースとは真逆で、これは、AV女優としての経歴により人生を狂わされてしまった事例だ。AV女優として働いた過去は、それが武器になることもあれば、自分の人生を壊す爆弾となることもある。
元AV女優から日本経済新聞の記者になり、現在は社会学者・文筆家として活動する鈴木涼美氏は、かつてよりAV業界の暗いイメージは少なくなり「選ぶ職業によっては“元AV女優”という肩書が、武器や強みとして生かせる場所が増えているんです」としながらも、それは広い世間のごくごく一部であると自らの体験を交えながら語っている。
「ネガティブイメージが強いからこそ肩書に破壊力がある。私も週刊誌に過去を暴露されたときは親に迷惑をかけたり、元勤務先からも『日経のブランドに傷をつけた』など、やっぱりいろいろ言われました。世間の反応が緩くなってきたからといって、その肩書はただ有名になれたり、人よりも目立つことができるような“万能パス”じゃない。『良くも悪くも元AV女優というレッテルは一生ついて回るんだ』という自覚が必要です」
「受け入れられやすくなっていても、それは都会だからこその風当たりの変化だったり、価値観かもしれない。地方に行ったり、一般人として結婚や恋愛をしようとしたとき、どうしても元AV女優という肩書は鎖のように行動を制限してきます。だからこそ常に、『自分は他人や世間からどう見られているのか』を考える必要があります。肩書の力が強すぎるからこそ、公表したらどう見られるか、損得はどれくらいかなど、元AV女優は人一倍“世間の空気を読む力”が問われてくるのです」(「SPA!」より)
過去のキャリアを新しい仕事でどう活かすかを考えるのは、どの転職希望者も同じだが、「元AV女優」の肩書をもつ人たちは、より難しい舵取りを迫られるのは想像に難くない。
本当なら、そういう「覚悟」や「自覚」の必要のない、過去の経歴と関係なくさまざまな可能性が開かれるような社会になれば、一番いいと思うのだが…。
(田中 教)
最終更新:2017.11.24 09:18