以上は録音の冒頭部分にあたり、電話口の人物が日本会議を名乗った直後のやりとりである。日本会議が安倍内閣を絶賛し、この機を逃すものかと力を込めているのがわかる。しかし、その後の通話では、日本会議は最終的目標を「自主憲法制定」としながらも、具体的に憲法のどの部分を変えるべきなのかについては説明を曖昧にする。
A 僕もその、憲法改正の大会に興味があったので、参加したんですけども、日本会議さんの憲法改正の一番の目玉っていうのは、やっぱり第1条(天皇条項)なんですか?
日本会議 最終的にはね、日本の国にふさわしい自主憲法を制定すべきだと思います。
A 前文も含めて?
日本会議 前文も含めて。ただね、いまの安倍内閣で全部それができるかといったら、なかなかそうはいかないですよ。したがいまして、いますぐに目指すのはですね、たとえば98条ですかね、(衆参での憲法改正の国民投票発議を)3分の2条項を2分の1にするとかですね。
A 98でしたっけ、96でしたっけ?(実際には憲法96条)
日本会議 それから、あー、緊急事態条項を加味するとかね。いうようなところがまず、それも個々の問題ですけれども、いまの安倍内閣にまず期待したいところはですね、70年間開かずの扉の憲法を開けるというところに意味があると思います。これは開かずの扉で、錆びついてるんですよ。世界中にこんなものはありませんわね。
日本会議による「自主憲法制定」への“戦略”が、見事なまでに、これまでの安倍首相の発言と一致していることがわかる。実際、その後のやりとりのなかではAが「日本会議としてもとりあえず、憲法を変えてみるというところで、国民のアレルギーといいますか、拒否反応をなくしていこうということですか」と聞いているのだが、これに対し日本会議は「そういうことですね」とあっさりと認めている。“お試し改憲”の先に日本会議が目指すものは何か。通話記録からは、そのひとつとして“家父長制の復活”が垣間見れた。