中には、こんな意見もあった。
「もし自分の夫がこんなこと言い出したら、「私も失敗した、私も育児に向いていない。(だからやらない)」って言う。誰も育児しなくなった結果、子どもが死ぬ」
夫の育児協力、さらには社会全体の共同養育がテーマとなっているにも関わらず、子どものオムツ交換が上手くいかず以降それを放棄したというエピソードを披露する恵。その発言はテーマや趣旨からズレているだけでなく、もしこれが母親の発言だったら、育児放棄、虐待といった批判さえ巻き起こるような類いのものだ。あまりに無自覚な恵に対し、虹川や眞鍋だけでなく多くの女性が唖然とし、不快感を表明するのは当然だろう。
しかも恵の問題発言はこれだけではなかった。
母親の孤独がテーマの番組冒頭のVTRで激しく泣く赤ちゃんを抱いた母親の「何の地獄かと思いました」というコメントや、子育てが辛いのは個人の問題ではないとのナレーションに対し、眞鍋と虹川は共に共感したが、しかし恵だけは違った。意味がわからない、困ったとばかりの表情でこう疑問を呈したのだ。
「教えてくださいよ。具体的に何が地獄なんですか?」
「(子どもが)生まれてきてやっぱり幸せだったり、かわいかったり、愛おしかったり……」
虹川がこれに対しても「孤独なんです」と答えるとさらに恵は畳み掛けた。
「はーぁ、何でそんなになるんだろうか?」
4児の父親である恵は、子育て中の母親の孤独や多くの苦悩に対し、ただ困惑し、一貫して意味が分からないとばかりの態度だったのだ。しかしこれは決して恵一人の認識、問題ではないはずだ。
「子どもは無条件で可愛い。子育てが出来るのは母親として幸せなことだ。たかが泣いたくらいで、そして父親がオムツを交換しないからといって地獄はないだろう」──。恵、いや“恵なる父親たち”は本気でそう思っているはずだ。しかも恵は現在においても、女性たちがなぜ怒りを表明し、批判しているのかさえ分からないかもしれない。