『危ない不動産』(別冊宝島 2428)
暴落の株式市場だけでなく不動産業界も大寒波が到来している。1月に発表された12月の数値がどれもぱっとしないのだ。
まずは新築マンション。不動産経済研究所が1月19日に発表した「12月の首都圏マンション市場動向」によると、発売戸数は34.1%減の6189戸と落ち込んでいる。これは、ともに7カ月連続の上昇の戸当り価格5457万円、平米単価76.2万円という高水準から発売自体が抑制されたためと見ることができるが、問題は、実際の契約率は64.8%と低調だったことだ。売れ行きの好不調の目安となる7割を大幅に下回った格好だ。販売在庫は6431戸に積み上がり、2010年1月以来、5年ぶりの高水準となっている。
高騰している新築マンションから中古マンションへと消費者の需要が移っているのだろうか。中古マンションも落ち込みが目立つ。
東京カンテイが1月21日に発表した15年12月の中古マンション価格(70平方メートル換算、売り希望価格)によると、首都圏は、前月比0.2%下落の3269万円となった。連続上昇は15カ月でストップしたのだという。ただし、これは売り主側の価格だ。
さらに、実際に成約した価格を見てみる。公益財団法人東日本不動産流通機構の最新の12月のデータ(月例速報 MarketWatch 15年12月度)では、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の中古マンションは価格2948万円(前年同月比+4.8%)、平米単価45.80万円(前年同月比+5.2%)と好調のようにみえるが、東京都23区内のうち、都心3区(千代田区、中央区、港区)に絞ると、価格5355万円(前年同月比-6.6%)、平米単価96.83万円(前年同月比-3.0%)と下げに転じているのだ。都心3区はアベノミクスマネーでエリアバブル化した地域だ。そこが震源地となり、下落するとなればショックは大きいだろう。
さらに在庫も3568戸(前年同月比+91.2%)と大きく積みあがっているのだ。ほぼ前年の2倍にまで膨らんだ供給過剰で今後も下げが予想される。
いったいなぜ、このような下げに転じているのか。それを解き明かすのは『別冊宝島 危ない不動産』(宝島社)だ。
同書によれば、きっかけは、昨年10月に発覚した、杭打ち不正問題だという。業界大手の三井不動産レジデンシャルがデベロッパー(開発販売業者)として販売した横浜市都筑区の「パークシティLaLa横浜」(施工は三井住友建設)のウエストコースト(西棟)が、基礎工事の杭が支持地盤(固い地盤)に刺さっていないことが原因で傾いた騒動だ。