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アダルトビデオがクールジャパンに!「ぶっかけ」が海外でBukkake=ブッカキーと呼ばれ大ウケ…その理由は?

 一介のAV監督が表現欲求に焚き付けられて走り出した命知らずの旅。その挑戦はあっけない最後を迎える。クロアチア政府から国外退去処分を受けてしまうのであった。

「サイレン鳴らしてパトカー追ってきたから、あわててシートベルト締め直したり。さすがに戦地でシートベルトはないだろ(笑)。
 警官が降りてきてさ、『カメラ止めろ』って言うんだけど、彼らはそれを拳を前後にクルクル回して伝えるの。要するに映写機のクランク回してる感覚なんだよね、こっちは8ミリビデオなのに。何年前の感覚だよ(笑)」
「あのあと警察署に連行されたの。戦闘地域に何にも知らずに入り込んでカメラ回してたから、何者だってことで。えらい剣幕で怒られたんだけど、むこうの言葉だからなにも分からない。僕らも日本語でペラペラ反論して。相手もまったく分からない(笑)。(中略)で、埒があかなくて、日本人だってことは分かるから、結局大使館経由で人が来た」

 結局、この作品ではまともなセックスは写されていない。欧米のポルノビデオのように、アダルトビデオを自慰行為のための道具と捉えるのであれば、こういった作品は単なるゴミでしかないだろう。しかし、この作品はそうは受け止められなかった。

 そして、AVという表現の可能性を押し開こうとするこのクリエイターたちの姿勢は今にいたるまで続いている。この流れが、AV作品が劇場用映画に編集され、スマッシュヒットを飛ばすにいたった、カンパニー松尾監督の『劇場版 テレクラキャノンボール2013』まで受け継がれているのは言うまでもない。

 ただ、本書で藤木TDC氏は触れていないが、AV業界にはこうしたある種の規格外れの作品を生み出すエネルギーが徐々に減退しているのも、否定しようのない事実だ。

 昨今いたるところで報道されているように、いま、日本国内のAV市場は壊滅的な危機にある。現在、1ヵ月の間にリリースされるAVは2000タイトルとも言われている。1タイトルあたりの売行きは300本〜400本が平均値。1000本いけばヒットというような状況だ。予算はどんどん削られ、最近は新たな発明をする余裕もないまま、自転車操業で粗製乱造に陥っている傾向が出てきている。

 前述してきた海外での「ジャポルノ」人気も副産物のようなもので、日本のAV産業を支えるような規模にはなっていない。

 AVというジャンルが生き残るためには、日本の他の産業と同様、冗談ではなく、本格的に「クールジャパン」として世界市場に活路を見出す必要があるのかもしれない。
(田中 教)

最終更新:2018.10.18 03:47

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