では、日本のアダルトビデオ界は、具体的にどんなAVを生み出してきたのか? その典型が「Bukkake」だ。
巷間知られている通り、数名の男優が女優の身体に次々と精液をかけていく行為「ぶっかけ」は、日本独自のポルノ表現として受け入れられ、今や「Bukkake」として欧米でも伝わる言葉となっている。
この「Bukkake」なる言葉を世界に持ち込んだ男は、松本和彦という人物だ。松本は94年、「ザーメンマニアの聖地」とも呼ばれるビデオ販売店・ミルキーショップ・エムズを開業。有名AV女優に多人数の男優が射精し、それらのザーメンを飲み干させるという過激な作風のビデオを制作することで、絶大な人気を集めていた。
その人気を後ろ盾に、96年、松本は世界中からポルノメーカーとディーラーが集める見本市「VSDA(Video Software Dealers Association)」に出展。これが大きな契機となる。松本は同書の中で当時をこう振り返っている。
「〈ブッカキー〉って発音するんですよ、向こうの人は。その語感が印象に残ったんじゃないですか。VSDAに持っていったのは『’95年決戦』(主演・南口るみね)って、主演女優が100人分のフェラをしてザーメンを飲む内容のビデオで、あの時は販売はせず、映写だけでした。日本人がポルノの国際コンベンションに出展するのも初めてだったし、内容もアメリカにそれまでなかった過激なスタイルってことで、ブースはもう黒山の人だかりですよ」
モザイクの存在のせいで、直接的なハードコア表現では勝負できないがゆえに、試行錯誤の末生み出された「ぶっかけ」という表現。それは「Bukkake」として世界中で受け入れられ、さらに、日本のAVが「ジャポルノ(Japorn)」として認知されるきっかけにもなった、ということらしいのだ。
世界が驚く日本のポルノ表現は他にある。たとえば、「マシンバイブもの」だ。電マやドリルバイブなどの器具を用いて女優を悶絶させる一連の作品は日本独自のもので、しかも、それはどんどん進化というか、あらぬ方向にエスカレートしていった。
なかには、ペダルを踏むとサドルからディルドが突き出るよう改造された自転車にAV女優を乗せ外を走らせる『アクメ自転車が行くッ!!』という驚きの企画まで生み出された。