『ニッポンAV最尖端 欲望が生むクールジャパン』(文春文庫)
アニメ・マンガは言うにおよばず、原宿ファッションや、きゃりーぱみゅぱみゅ・BABYMETALのようなJ-POPまで、世界中で日本発のポップカルチャーが人気を博している。こうした状況をメディアは「クールジャパン」と持ち上げ、経済産業省もクールジャパン戦略を日本経済活性化の切り札として、最重点政策に掲げている。
しかし、日本にはこれら表の動きでは一切取り上げられない、もうひとつの「クールジャパン」コンテンツがある。それは、アダルトビデオだ。
中国・韓国などの東アジア諸国では、蒼井そらが国民的人気を獲得。中国版ツイッターと呼ばれる微博では、彼女のフォロワー数は1600万を突破している。さらに、最近では「ポスト蒼井そら」として波多野結衣が台頭。台湾では女優として映画出演を果たすなどもしている。
日本産AV人気はアジア諸国だけにはとどまらない。日本のAVはジャポルノ(Japorn)と括ってジャンル化され、さらに、日本産のアダルトコンテンツを総称して「Hentai」と呼ぶのもいまや世界共通語となりつつある。
なぜ日本産のアダルトコンテンツは世界中でここまでの人気を得ることができたのか。ライターの藤木TDC氏は『ニッポンAV最尖端 欲望が生むクールジャパン』(文藝春秋)のなかで、日本の法規制、そして「モザイク」の存在がこういった状況を用意したのだと語っている。
〈ポルノとしては致命的なハードコア表現の不可能性を克服するため、AVは別のベクトルを持つエロスを模索し、映像として創造しなければならなかった〉
欧米のポルノとちがって直接セックスを見せることのできない日本のAVにおいて、ユーザーを満足させるにはひと工夫が必要だった。それが、ニッチな性癖に応えるようなマニアな作品を生み出したり、奇想天外な演出を練り上げたりと、世界中どこにもない独特なポルノをつくりあげていくことになる。