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年収600万円以上の大企業正社員が突然、貧困に! 低所得者を「自己責任」と突き放している中流クラスが危ない

「1年上の先輩の代は80人中12人くらい辞めているらしい。ノイローゼになったり失踪した人もいるという噂です」

 銀行の仕事は決して奇麗ことばかりではない。プレッシャーも大きい。そのために辞めていく人も多いのだ。そうしたことを見てきた永島さんは切り詰めた生活を送っている。さらに将来にも漠然とした不安さえある。

「お上は地銀は1県1行体制にする構想を持っている。そうすると下位行のうちなんか飲み込まれる方だからリストラされる確率が高い。そうはならなくともある年齢に達すると関連会社に出されたり取引先に転職させられることもある。最後まで銀行員でまっとうできるのは一握りですから」

 他にも日本郵政の社員アルバイトとなったが5年経っても年収230万円ほどで正社員になれない30代男性、公立図書館に務めているが民間委託された管理運営会社の社員で年収200万円。そのためスーパーでパートもこなす30代の女性など、一見安定して堅い仕事だと思われている職業、職種にも貧困は大きな口を開けて立ちはだかっている。

 本書では34人の様々な“貧困”にスポットを当てた上でこんな指摘がなされている。

「問題なのは中流以上のポジションにいて危機感の希薄な人たちだ。『ふーん、世の中にはこんな貧乏人がいるのか』『こんな稼ぎで恥ずかしくないのかね』『自分の毛並み、経歴は一級品。間違ってもこんな惨めな人間に落ちぶれることはない』『ただ文句を言っているだけ、自己責任でしょ』。こんな感想を持つ人が多いのではないかと思うが、実はこういう人がデッドラインにいることがある」

 しかも彼らはそのことに気づかないばかりか、消費増税、法人減税、社会保障や生活保護の削減といった、自分たちのセーフティネットを断ち切るような安倍政権の格差助長政策を積極的に支持し続けている。

 彼らに、自分たちこそが将来、強者の餌食になってしまうということをわからせるためには、いったいどうすればいいのだろうか。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.12.15 07:01

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