ヒトラーがワイマール憲法を骨抜きにした、かの有名な全権委任法は、政府に憲法で制限されない特別な立法権を委ねるものだった。一方の自民党草案では、首相は緊急事態宣言をすることで、事実上、立法権を独占する。
「ですから、本来そういうものを憲法に書くことが自己矛盾と言えます。いずれにせよ、国民が知らないところで一切の反対を許さない状況のなか、なんでも政府がやりたいことを決められるということですから、憲法がないものになってしまう。今回、フランスでは憲法を改正して緊急事態に関する規定を改正しようという動きもありますが、それはある意味憲法の否定にもなりえること。大変危険な状態ですね。とりわけ、日本はいま安倍首相のもとで、非常に独裁的な事柄が起こっている。緊急事態条項を新設すると、本当に大変なことになってしまう。絶対に認めてはいけないと思います」(山下弁護士)
いずれも“テロ対策”が名目となっている共謀罪の新設、盗聴法の改正、秘密保護法。すべて捜査のために市民の人権を制限するものでありながら、恣意的な運用を許す法文上の瑕疵がある。そして、安倍首相自らが名言した緊急事態条項の創設──。
自民党憲法草案のなかには、首相が緊急事態を宣言するシチュエーションのなかに、《内乱等による社会秩序の混乱》が息を潜めている。この抽象的な文言が意味する“最悪のケース”について、われわれは思考を止めるべきではない。
(梶田陽介)
最終更新:2015.11.24 05:34