日本学生支援機構には、経済苦や病気の事情がある場合、利息や延滞金を免除したり、支払いの一時猶予制度や卒業後に専門学校などへ行く場合の在学猶予がある。だが、こうした制度さえ知らされず、督促裁判を起こされるケースも多い。そして、とことん延滞金にこだわるという。こうした姿勢について同書にはこう記されている。
「サラ金などの返済が困難になった場合、債権者と債務者が裁判所で話し合うという費用が安く、比較的穏やかな手続きがあります。特定調停です。ところが、日本学生支援機構は、この特定調停でも歩み寄りの姿勢がないのか、現状ではほとんど活用されていない模様です。件数すら集計していません。そして、問答無用といった調子で支払い督促や差し押さえを繰り返しているのです」
一度滞納すれば、容赦ない取り立てを行う。それは生活保護を受けていても例外ではない。本書では奨学金のため苦境に立たされた人々の声がこう紹介される。
「病気のため非正規職で働きながら生活保護を受けています。卒業後、しばらく奨学金の請求がありませんでしたが、突然、支払うように言ってきました。もう18年くらい、月に1000円〜2000円ずつ支払っています」
「うつ病になって仕事を辞めました。返済猶予の5年を使い切り、減額返還制度を利用するようになりました。最長10年間月々の返済額を半額にしても54歳までかかります。パートの手取りは9〜10万円。減額後の返済額は1万6000円ですが、延滞すると減額が認められなくなります。とても結婚や出産は考えられません」
「失業中です。返還額猶予の年数を使い切り、連帯保証人である父のところに請求が来ています。おじも保証人になっており、迷惑をかけたくありません。自分が死んで支払いを免れるなら死んでしまいたい」
実態はまさにサラ金以上のブラックぶりだが、しかし一方で、そこまでして大学に進学しなくても、との声も存在する。先日ホリエモンこと堀江貴文がツイッターで「奨学金を貰ってまでいく価値のある大学とかどれだけあんの?」とつぶやき物議を醸したが、もちろん無理してでも大学に行く理由が現代にはある。それが高卒求人の激減で就職が厳しく制限されていることだ。