これは朝日新聞の記事ではない。産経新聞社の出版物に書かれた記述である。産経が慰安婦問題の火付け役になったと主張する植村氏の記事に先立つ19年も前の記事なのだ。自社の新聞記事さえまともにチェックしていなかった阿比留記者のことだから、おそらく産経がかつてこういう本を出していたことも知らないのだろう。植村氏が初めて慰安婦の記事を書く19年も前に、産経は〈女子挺身隊すなわち慰安婦たち〉と明記していたのだ。メディアの相互批判はもちろん大切だが、自社の報道をすべて棚上げにして、他社の記者を批判するのはアンフェアだ。
それかあるいは阿比留記者は、もしかしたら産経の報道は日韓関係に波紋を投げかけるほどの影響力はないが、朝日は影響力があるから、とでも思っているだろうか。それはいくらなんでも朝日に対する買いかぶりで、自社を卑下しすぎているというものだ。一方の朝日もこんな底の浅いバッシングに萎縮するのではなく、堂々と反撃するべきではないか。
(野尻民夫)
最終更新:2015.10.27 06:04