『歴史戦 朝日新聞が世界にまいた「慰安婦」の嘘を討つ』(産経新聞出版)
産経新聞出版が出した『歴史戦 朝日新聞が世界にまいた「慰安婦」の嘘を討つ』という本がある。〈朝日新聞が世界にまいた「慰安婦」の嘘を討つ〉というサブタイトルからおわかりの通り、昨年8月の朝日新聞の慰安婦報道に関する検証・記事取り消しを受け、ひたすら朝日新聞を攻撃するために書かれた本だ。著者は「産経新聞社」と記されている。一般に著者名を「◯◯新聞××取材班」としている本はよくあるが、新聞社そのものというのは珍しい。実際には同社の名物記者、阿比留瑠比氏らが中心となって執筆している。
社を代表して序章を書いているのが阿比留記者だ。その筆致はなかなか勇ましい。
〈事実に基づかない積年の慰安婦報道を通じ、日本の国際的な地位と名誉を傷つけ、国民の誇りを奪い続けてきた朝日新聞がついに“決壊”した〉
〈朝日新聞はいまだに、慰安婦問題で自社が犯した過ちの数々、自社の歴史を直視するつもりはないようだ。朝日新聞との「歴史戦」は、今後も続く〉
〈産経新聞は長年にわたり、歴史問題に取り組んできた。特に、日本の国際的名声を大きく毀損してきた慰安婦問題に関しては朝日新聞など他紙との論戦も辞さず、徹底的に検証を重ねてきた〉
〈手前みそになるが、産経新聞による地道な検証記事の積み重ねが、慰安婦問題に関する韓国や左派メディアによる「洗脳」を解いた部分もあると自負する〉
〈産経新聞は非力ながら(中略)、「戦後レジーム」の申し子である朝日新聞の動向を監視し、問題があればその都度、非を鳴らし、改めさせなければなるまい。
そして今後も歴史問題と正面から向き合い、こつこつと事実を報じる努力を続けたい。例え匍匐前進であろうと、継続すればいつかは大きな前進となるはずだ〉
こうした“立派”な主張を繰り返す阿比留記者が、24年前に韓国で初めて慰安婦だったことを名乗り出た女性の記事を書いた元朝日新聞記者の植村隆氏への直撃インタビュー(産経新聞デジタル版に掲載)を敢行したが、逆に反撃されてタジタジとなった経緯は本サイトでも2回にわたって詳報した。この本、『歴史戦』でまずヤリ玉にあげているのが植村氏の記事なのだ。阿比留記者、というより産経新聞社の主張はこうだ。