さらに、歌川国芳『妖怪見立陰陽図』にいたっては、頭部に性器・股間に顔がついた“男根人間”のような化け物まで登場する始末。現代の多様な性表現を見慣れた目で見ても、ちょっと衝撃を受けてしまうような作品まで存在している。
先ほども述べたように、当時の人々はそういった作品群を皆で笑いながら鑑賞した。幕末に来日した西洋人たちはその姿に驚いたという記述も残っている。
開国から150年あまりの時が経ち完全に西洋化された現代の日本人の感覚では、皆で春画を見て笑うというのはちょっと理解しがたいが、銭湯では混浴が当たり前、男女とも暑ければ上半身ハダカでそのあたりをウロウロするのもさほど珍しい光景ではなかった当時としては、皆で春画を見て笑い合うという感覚も至極当然のものだったのであろう。
時代劇や大河ドラマでは味わえない、ちょっぴりアングラな江戸ロマンを味わいたい方は是非とも春画に触れてみてはいかがだろうか? きっと、その表現の多様さ、豪奢さなど、現在の日本人はあまりにも違う当時の日本人たちの感性に驚かされるはずだ。
(田中 教)
最終更新:2015.09.24 11:21