昼になっても同様だった。『ワイド!スクランブル』(テレ朝系)は30分にわたって放映したが、『ひるおび』(TBS系)ではやはりラグビーW杯を長時間放映した後にようやく安保問題を取り上げている。『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)もやはり冒頭はラグビーW杯で、安保問題はVTR含めわずか10分ほど。
しかもメインの話題は、「安倍首相、ゴルフで英気を養う」「安倍首相、61歳の誕生日」「安倍政権発足から、1000日を迎える」などと安倍首相の労をねぎらい、内閣改造の人事やアベノミクスの行方など今後の政権運営についてどうでもいい床屋政談を繰り広げるだけ。一方で、共産党の野党共闘の呼びかけや民主党の安保法案抗議の街頭演説、あるいは反対デモの動きなどには一切ふれない。安保問題は完全に過去の終わった話扱いだった。
そして翌火曜日は、ほぼすべての情報番組で、安保法制は全く取り上げられなかった。安保法制成立からたった3日間で、多くの国民に影響力のあるテレビから安保法制問題が消えたのだ。
全国紙も同様だ。19、20日と安保法制成立を大きく伝えたものの、その後は触れないか、または小さな扱いへとシフトしている。
これだけ社会から関心を集め、大規模デモが起こり、著名人たちも一斉に反対を唱えるという大きな問題に発展した安保法制だが、成立してしまった後には、瞬く間にマスコミの関心は薄らいでいるように見える。
そして、実はこの事態こそが安倍政権の目論むものだったようだ。全国紙政治部記者がこう解説する。
「安倍首相からしたら、安保法制が成立さえすれば、一刻も早くこの問題を国民から忘れさせたいというのが本音であり戦略です。もちろんそうした安倍政権の意向をマスコミも十分に承知している。そのため“安保後”のマスコミ、特にNHKや読売、産経といった親衛隊メディアは安保問題を早々に切り上げ、次なる話題に世論を誘導しようとしているのです」
例えば「読売新聞」(9月21日付)では、「税制のプロ 民意と隔たり」として消費税率が10%にアップされた際の給付金問題を大きく報じ、翌22日付では10月上旬に予定されている内閣改造を“政局”の目玉のように扱っている。