ところが、こうした「週刊ポスト」の報道に激怒した官邸は、様々な方法で「ポスト」に圧力を加え続ける。安倍首相と懇意の幻冬舎・見城徹社長を通した「ポスト」発行人の森万紀子氏への執拗な抗議、マスコミ人脈を使った小学館上層部や幹部編集者への個別のプレッシャー。さらに、スキャンダルを暴かれた高市早苗サイドは、三井編集長、森発行人らを民事の名誉毀損訴訟だけでなく、刑事でも告訴。菅官房長官も訴訟の構えを見せた。
こうした安倍政権、官邸の圧力に震え上がった小学館は三井編集長が就任1年だったにもかかわらず更迭を決定、その後釜に前編集長だった飯田昌宏氏を出戻らせるという仰天人事を行ったのだ。
実際、飯田編集長が返り咲いた後の「ポスト」からは、すっかり安倍政権批判は鳴りを潜め、当たり障りのない記事ばかりが掲載されるようになってしまっている。それがなぜ、今回、こんな記事を掲載したのか。
「いや、だからこそ、ですよ」と言うのは、飯田氏を昔から知る週刊誌関係者だ。
「権力には弱腰の飯田編集長ですが、抗議したり訴えてこない相手には、かさにかかって責め立てる傾向があります。嫌韓ブームのときもそれに乗っかって、ひどい嫌韓記事を連発していましたからね。今回も同じで、元少年A問題は多少過激にやっても、読者からも社会からも批判を浴びることはありません。もちろん官邸からもね(笑)。逆に嫌中嫌韓路線を支持する読者やネトウヨからは、大喝采さえ浴びるかもしれないし、実際、既にネットでは実名報道に関し「人権侵害がなんだ、社会正義だぞ」などと支持する書き込みもある。女性蔑視のエロ路線もそうですが、権力には媚び、力のない人間のことは徹底的に叩くということなのでしょう。今回の実名報道にしても、たいした覚悟があるわけじゃない。部数も低迷しているから少しでも話題になって部数が伸びれば程度の認識なのです」(週刊誌関係者)
そういえば、今回の実名報道も「彼はもはや「過去の人」ではない。現在進行形の事件の主役である――」「少年Aの実名と顔写真を公開する」などと大々的に広告を打っていた割には、そうたいしたものでもなかった。
というのも、「ポスト」が報道したAの実名と顔写真は既に、事件直後に「FOCUS」(新潮社/2001年休刊)や「週刊新潮」が掲載したものにすぎなかったからだ。これらは、ネットでも広く出回っており、「ポスト」はそれをまんま載っけただけで、事前に囁かれていたAの「詳しいプロフィール」も「近況」も何も書いていなかった。