このように高村副総裁が興奮したり返答に窮すると、すかさず島田氏が割って入り、発言者を変えるなどして、高村副総裁に冷静さを取り戻させるというシーンが幾度となく繰り返されたわけだが、そのなかでも、とりわけ邪険とも言える扱いを受けたのが山本太郎議員だ。
そもそも与えられた発言機会自体がごくわずか。90分の放送時間のうち、たったの3回である。まず1回目、山本議員は「戦争法案はアメリカのリクエストであることは間違いないわけですよね。高村さん、あの最高裁の砂川判決もアメリカのリクエストでしたもんね」と、日米密約という“爆弾質問”を投下したのだが、高村副総裁はごまかしの返答。すると、すぐさま島田氏は「はい。その指摘についてはまた別の、後の機会で。(日本を)元気(にする会)、松田(公太)さんお願いします」と、そそくさと次へ進めてしまう。
2回目の発言の際にはもっと露骨だった。山本議員は「集団的自衛権の行使容認、誰が必要としているか、要求しているかという話ですけれども、さきほどはそれは米軍だという話をしました。それは国内にもいます。誰なのか。経団連です」と、自民党の支持母体について突っ込んだのだが、これにはなんと、高村副総裁が一言も発するまでもなく、島田氏が「はい、山本さん! 各党のご意見も聞いていきましょう」と、話題を一方的に打ち切ってしまったのだ。
案の定、その後、島田氏が番組の最後まで砂川判決や経団連に触れることはなかった。このように、与党が劣勢になりそうな質問には徹底して論点を白紙化するような島田氏による仕切りを見ていて、いったいなんのための生討論なのか、首を傾げた視聴者がほとんどだろう。
そして、この島田氏による“高村アシスト”の最たるものが、番組開始から1時間が経過しようとしていたときに行われた。安保法制で自衛隊の活動範囲が「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている場所ではない場所」に事実上拡大されることのリスクが俎上に載せられたのだが、そのとき高村副総裁の本音がポロリと漏れた場面があった。
「いままで、自衛隊の活動期間中、たとえば6カ月とか1年とか、そういう間に戦闘が行われないと見込まれる地域といっても、こんなの神様じゃなきゃわかんないんですよ」
「現実にわかんないからね、安全性を同じように確保するために、防衛大臣に安全確保義務として、5日とか2週間とかそういう期間、やっている間は戦闘が見込まれない地域ってこと、ちゃんと定めてますから。それほど(リスクは)高まりません」
つまり、高村副総裁はこう説明しているのだ。これまでの「非戦闘地域」という概念も本当に戦闘が行われないかというと「神様じゃなきゃわかんない」ものだったが、安保関連法改正で、防衛大臣が活動地域について一定期間を決めて自衛隊員の安全確保の義務を負う、と。
だが、高村副総裁が言うところの「安全確保義務」は、あらたな安保関連法案のなかの「重要影響事態法」「米軍等行動関連措置法」の条文のなかで明記されていないのである。つまり、高村副総裁は、従来の「非戦闘地域」を曖昧なものと印象づけ、逆に、誰が見ても明らかに自衛隊の活動範囲が広がる安保法制下でこそ規定されるかのように発言しているが、実は真っ赤なウソなのだ。