しかもこの「広義の安全保障」「安全保障・防災/産業振興への貢献」なる解釈は第二次安倍内閣以降に出てきた考えで、実際に13年度の概算要求からこのあまりに都合のいい概念が使われているのだという。
まさに安保便乗の“焼け太り”だ。安保法制は未だ審議中で成立さえしていないのに、こんな有様なのだから、今後もし安保法制が成立などすれば、便乗予算がますます増えて行くことは容易に想像できる。なにしろ、この国の政治家、官僚、行政は東日本大震災での25兆円という膨大な復興予算の多くを何ら関係のない事業に“流用”“投入”してきた前科があるからだ。
そのいくつかを示すだけでも、国会議事堂のステンドグラス代1億円、霞ヶ関合同庁舎4号館改修費12億円、シーシェパード対策費23億円、刑務所の職業訓練拡大3千万円、沖縄の道路整備22億円、海外への青少年の被災地視察72億円、中小企業設備投資補助2950億円、武器車両等整備669億円──これだけでありとあらゆる省庁がこぞって予算を貪り、介在し流用した様子がわかるだろう。
しかも今回、安保便乗予算が明るみに出た文部科学省は福島原発時、莫大な予算をかけたSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を全く活用せず、多くの住民を被爆させた張本人でもある。
憲法違反、自衛隊のリスクなど様々な議論が噛み合うことなく空転し続ける安保法制だが、そうした議論の裏で政治家や官僚たちはその利権を着々と構築している。
安保法案廃案と共に、こうした予算に群がるハイエナ集団の動向をもまた監視していく必要があるだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.09.07 05:02