会見では、武藤敏郎事務総長の無責任ぶりと危機管理能力のなさが露呈(YouTube「ANNnewsCH」より)
すったもんだの大騒動を繰り広げた五輪エンブレム問題だが、遂に9月1日、大会組織委員会が会見を開き、エンブレムの使用中止を表明した。
しかし、その内容は国民の不信感と怒りを増幅するものでしかなかった。「デザイン界の理解では模倣ではないが、一般国民には受け入れられない」などという意味不明な説明に加えて、佐野研二郎氏の「私や家族に誹謗中傷が続いている」といったまるで被害者のような言い分、責任の所在を一切明らかにせずにひたすらごまかそうとする姿勢……。
とくに、火に油を注いだのが、会見で説明を行った武藤敏郎事務総長の当事者意識のない姿勢だ。「審査委員の先生方が」「我々はデザインの専門知識をもっているわけではないので」などと逃げをうちながら、「土日で局面が変わった」などと、まるで他人事のように解説したのだ。
さらに驚いたのは、今回のエンブレム制作について「審査会場のレンタル費と、審査委員の方の日当」「税金でまかなわれているものは一切ありません。スポンサー料でまかなわれております」と、まるで経済的損失がないかのように答えたことだ。
たしかに、エンブレムのポスター制作などはスポンサー収入でまかなわれるが、この男は組織委員会の運営に税金が投入されているということをまったくネグっていたのである。
しかも、エンブレムはスポンサー収入でまかなわれるというが、今回の白紙撤回でスポンサー企業から損害賠償の訴えを出されることが必至の情勢なのだ。会見の翌日には組織委員会の副事務総長である布村幸彦氏が国会で「法的には損害賠償の問題が出ると受け止めている」との認識を示したし、その損害額は100億円超とも言われている。
それをいけしゃあしゃあと「損害はない」と言うのだから、いったいどんなリスクマネジメントをしているのか、と、心配になる。