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もはや愛国ポルノ!? 空疎な“日本人はスゴい”論連発で大ブームの日本礼賛本トンデモランキング

★第5位 「『日本のランチメニューは本当に素晴らしい!』と来日したイギリス人は皆、口を揃えて絶賛します。(略)何よりも500円前後で買える“ベントウ”」
井形慶子『日本に住む英国人がイギリスに戻らない本当の理由』(ベストセラーズ)

 ■自分は優雅な英国生活を送りつつ日本で500円“ベントウ”を絶賛する出稼ぎ商法!?■

 40年前からイギリスと日本の間を往復し、数十冊ものイギリス関係の書籍を出版。英国生活情報誌の編集長でもある井形氏だが、このところイギリスよりも日本が素晴らしい、という本を出版し、ヒットを連発している。

 たとえば、昨年出した『日本に住む英国人がイギリスに戻らない本当の理由』では「日本では、24時間(略)営業のコンビニエンスストアが全国各地にあり、遅くまで開いている飲食店も多数あります。しかも、どこでも日本式の丁寧なサービスを受けられるので、ストレスフリーです」とその利便性を認め、日本では「塾」と「部活」「門限」が良質な教育環境を作り出していると大絶賛。そして返す刀で「イギリスでは塾や部活がありませんので、子どもたちは大人の目の届かないところで多くの時間を過ごします」とし、将来に希望が持てない子どもたちはドラッグの道へ進み、「さらにドラッグほしさに盗みや恐喝などの犯罪に走ってしまう」と批判、「イギリスより日本教育が勝っている」と結論づける。

 ところが、この井形サン、かつてはまったく別のことを言っていた。代表的な著書『古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家』(大和書房/2000年)では、イギリスとは違い「コンビニ、ATM、自動販売機などがそこら中にあるため」に「日本の伝統的な景観は確実に崩れてしまった」と嘆いていた。そして。子育ても受験勉強に見られるように「日本人はあまりに既成の価値観や情報に『こうするべき』と縛られ、こざかしく生きているのではないか」と警鐘をならし、日本の凶悪犯罪の増加の一因ではないかと指摘していたのだ。

 食に関する話も同様だ。井形氏は『日本に住む英国人が〜』では、冒頭に紹介したような、日本の食の礼賛、そして500円前後で買える“ベントウ”を絶賛している。

 東京では「そば、うどん、ラーメン、パスタ、カレー、寿司、定食など、安さとバラエティの豊富さは、イギリスの比ではありません」。ランチタイムの弁当も、イギリス人が「一度弁当屋に行けば、その種類の豊富さと内容に誰もが感動します。イギリスのサンドウィッチと日本の弁当を比べたら、中身も価格も食事としてのバラエティも圧倒的に上で、とてもかなわないと舌を巻くのです」というのだ。

 しかし、これも井形サン、以前の著書『お金とモノから解放されるイギリスの知恵』(大和書房/2001年)では、「イギリス人は日本人ほど料理の中身にこだわらない」「ごく普通のシンプルな料理をおいしいとし、日々の暮らしの中で食べ続けられれば、それで充分と思う。これ以上の味や質の料理があることを知っていても、それは暮らしの中で追求すべきことではない」。「『まずい』か『おいしい』かばかり論じる」のではなく食事は人と交わることを重視すべきと日本人に再考を促していたのだ。

 この10数年でまったく正反対の姿勢に転向したのだろうか。しかし、井形氏が実生活でイギリス嫌いになっている気配はなく、イギリス好きが嵩じて、最近、ロンドン郊外に住宅まで購入している。

 つまり、自分は優雅なイギリス生活を送りつつ、日本の添加物まみれで、使い古しの油で揚げられた“500円ベントウ”を絶賛しているのだ。「今の日本は、欧米の生活が素敵、という本より、日本のほうがすごいという本を出した方が売れるから」という計算が見え見え。こういう出稼ぎ商法に騙されちゃいけない。

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