東芝公式サイトより
「残り3日で120億円の利益を改善しろ」(佐々木則夫社長 2012年当時)
「テレビはなんだ、この体たらく。黒字にできないのならやめる」(田中久雄社長 2014年当時)
7月21日、東芝は粉飾決算を調査した第三者委員会報告書の全文を公表した。同報告書では過去7年間で1500億円を超える利益の水増しの事実に加え、予算達成のプレッシャー、「社長月例」と呼ばれる会議でのつるし上げなどのパワーハラスメントのもと、経営トップが関与して“不適切会計”が行われたと分析。これを受けて、田中久雄社長や前社長の佐々木則夫副会長、その前の社長の西田厚聡相談役ら直近3代の社長経験者を含む経営陣9人が引責辞任することが発表された。
新聞大手3紙の22日朝刊も、大きくこの問題を取り上げ、企業統治の実効性を高めるよう提言した。
しかし、実はこの問題に対するマスコミ各紙の動きは鈍かった。4月にSESC(証券取引等監視委員会)への告発があり、5月には各社ともかなりの証拠をつかんでいたにもかかわらず、散発的に報道するだけで、通常の企業不祥事のような追及は一切することがなかった。
さらに、第三者委員会が利益水増しを確定した現段階でもまだ「粉飾決算」という言葉を使わずに「不適切会計」というあいまいな言葉を用いている。3月22日の各社社説や解説でも、「自浄作用が働かぬ企業風土に問題」(日本経済新聞識者コメント)、「実効ある企業統治を」(朝日新聞社説)、「ルール軽視の体質を改める必要がある」(読売新聞社説)といった文字が踊り、各紙とも、今回の東芝の不祥事を「企業統治」の問題に落着させるかのようなトーンに終始している。
マスコミのこうした弱腰はもちろん、東芝が大スポンサーだからだ。東芝はグループ全体で年間329億円もの宣伝広告費を計上しており、これは日本の企業ではかなり上位に入る。それに配慮して、自主規制しているということらしい。
「これからSESCが検察に告発して刑事事件になれば、もっと厳しい追及をすると思いますが、現段階ではこれが限界ということです」(大手紙・経済部記者)