しかし、安倍首相や周辺にいるオトモダチはそう考えない。むしろ、戦前の大日本帝国の体制、「富国強兵」や「脱亜入欧」といった思想を肯定・美化し、その歴史修正主義をさらに現実化するため、この世界遺産登録をごり押ししたのだ。
自分の思想のバッグボーンである戦前への回帰を象徴する施設に、「世界遺産」のお墨付きをもらいたい──こんな話に付き合わされるとは、バカバカしいにもほどがある。しかも、遺産保護のためにかかる膨大な維持費は税金から賄われるのである。
安倍政権はついに国民の理解を得られなくても安保法制を通すと明言したが、この世界遺産登録もその地続きにある。多くの犠牲を伴ったという歴史を無視し、強い日本という架空の物語を世界遺産登録によって捏造し、戦争に駆り立てる──。こうした安倍首相の独善に、韓国ではなく、日本国民こそ怒るべきなのではないのか。今回の世界遺産登録を手放しで喜ぶことなどできない。
(水井多賀子)
最終更新:2015.07.06 03:22