読むのもしんどくなる(書くのもばかばかしくなる)ほどの警察不祥事の連続だが、最後に「3大不祥事隠し」と呼ばれる事件を記しておこう。
代表格は、神奈川県警の「警部補覚せい剤使用の隠蔽事件」だ。1990年代後半、外事課の警部補が女性と不倫関係になった上、覚せい剤を使用していたことが県警内部で発覚した。ところが、内部通報を受けた県警は何と本部長の意向で、事件の隠蔽を決定。当の警部補には因果を含め、諭旨免職にしてしまった。
結局は99年になって事の次第がバレてしまい、隠蔽を決めた当時の県警本部長や警務部長、生活安全部長ら、キャリア官僚を含む大幹部がゾロゾロと犯人隠避罪で有罪になってしまったのだ。県警本部長の経験者が在職時の犯罪で有罪になったのは、これが初めてだった。しかも、この事件では、ネタを掴んだあるマスコミの横浜支局が記事にしようとしたところ、東京本社の社会部がストップをかけるというオマケまでついた。
この“大事件”の翌2000年に起きたのが、「新潟少女監禁事件」にまつわる隠し事である。新潟県三条市で少女が9年余りも男に監禁されていた事件は世間を震撼させたから、ご記憶の読者も多いだろう。その少女の発見当日、特別監察のため関東管区警察局長がたまたま新潟県警に足を運んでいた。そして本部長をはじめとする県警幹部は一行を接待し、ホテルで大宴会や賭けマージャンにふけっていた。重大事件の指揮よりも仲間内の大宴会が大事だったわけだ。そもそも監察する側とされる側が「懇親会」にうつつを抜かしていたのだから、真っ当な監察などできるはずもない。案の定、新潟県警は「大事件の発覚時に幹部不在」という事態がバレないよう、少女保護の状況などについて公式発表の場でウソ説明をした。県警本部長も管区警察局長も警察庁採用のキャリア官僚であり、キャリアを守るために組織ぐるみでウソを重ねたのである。
「3大」のトリは、組織ぐるみの隠蔽工作の極めつけ、「北海道警察の裏金問題」だ。03年、長年の組織的な裏金作りが発覚すると、道警は最初、お約束のように「事実無根」と啖呵を切った。ところが、元方面本部長の実名告発や地元紙の追及などで次第に追い詰められ、1年後に10億円近い裏金づくりを認めてしまう。逆に言うと、1年間もシラを切り通したのだ。ただし、「私的流用」という名の公金横領は一切認めず、大量の会計書類を「誤って」廃棄した。事実上、刑事罰に問われた警察官は1人もいなかった一方、幕引きを図った道警本部長はその後、警視総監にまで出世したのである。