「トランス脂肪はとにかく全く必要ないのです」
「トランス脂肪は、単に『控えるべき』という警告程度ではすまされない、私達の心と体を蝕む『油』です。決して『対岸の火事』として終わらせるわけにはいかない、非常に深刻な問題なのです」
一体、どういうことか。そもそもトランス脂肪酸とは、マーガリンや、お菓子、揚げ物用など、植物油を加工する「ショートニング」の際に発生する有害な油のことだ。これは本来の“油”を不自然な構造に変化させたものであり、最大の問題は人間の細胞膜を破壊することだという。
「細胞膜は脂質で構成されていますが、トランス脂肪が入り込むと、必須脂肪酸の役割を果たさなくなるために、細胞膜の構造や動きが弱くなってしまうのはもちろん、細胞に必要なものが流失してしまったり、逆に有害物質が侵入しやすくなってしまうのです。これが全身の細胞で起こることを考えれば、健康でいられるはずがありません」
その危険性は例えばトランス脂肪がプラスチックに例えられることでも明らかだ。それは1960年代にアメリカの自然派運動家フレッド・ローが、マーガリンを顕微鏡で除くとプラスチック構造とそっくりだったことを発見し、また虫も寄り付かず、不自然に腐らないことから「マーガリンは本当に食べ物ではなく“食べられる”形をしたプラスチックなのだ」と結論づけたものだという。
こうした不自然な“油”は、人間の健康に大きな影響を及ぼす。これまでの研究で指摘されているのは、動脈硬化やぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー、また発達障害や認知症との関連も指摘されているのだ。
特に心臓病の誘発について、既に1999年の米国心臓学会ではこんなガイダンスを定めているという。
「心臓病の予防のためには、トランス脂肪の多いマーガリンなどを使わずに、それが少ないものを使うこと」
さらに、本書では糖尿病、ガンなどの病気とトランス脂肪の関係、そして注意欠損障害などの脳機能への影響まで指摘されている。
「特に、妊婦や乳幼児の油の摂り方に気を遣うべきです。人間の脳は、胎児期にさかんに細胞分裂を行い、出生後一年で約80%が完成、三歳までに神経回路が決定されると言われています(略)。妊婦がトランス脂肪を含んだ食事をしたり、乳幼児にトランス脂肪たっぷりの菓子類などを与え続けていると、脳神経の形成に大きな障害となるのは明白でしょう」