──では一点だけお願いします。クリエーターとして、差別的な言説は表現の自由の範疇だと思われますか。たとえば、「朝鮮人殺すぞ!」とか、そういう……
鈴木氏は、振り返り、質問を最後まで聞くまでもないと言わんばかりに、強く、こう言い放った。
「俺は、大っ嫌いです」
鈴木プロデューサーは、川上氏とニコ動のヘイト問題に言及することを慎重に避けたが、しかし同時に、最後には強い語調で差別言説に反対する意思を示したのだ。エントランスにいた周囲の人々がふりかえるほど響いたその声には、確かに“鈴木敏夫の思想”のようなものが表れていた。直接聞いた者として、そう印象を述べておきたい。
もっとも、川上氏とニコ動への鈴木氏の考えは聞けないままに終わってしまった。もちろん、師匠として弟子に説教してもらうこともできなかった。ジブリはこれからも、川上氏のそういった思想についてはまったく「知らない」こととして、彼とつきあっていくのだろうか。機会があれば、今度は宮崎駿監督にも訊いてみたいところだ。
(梶田陽介)
最終更新:2018.10.18 03:23