こうして風俗の道へと向かう女性は多いが、しかし、それぞれの千差万別の事情を抱え、そのため様々な貧困が存在するという。
30歳のカオリは3歳の子どもを持つシングルマザーだ。結婚前からソープで働き60万円ほどの収入があった。付き合っていた男性とデキ婚後も夫に内緒で風俗店で働いた。
「会社員の夫の給料でおカネが賄えるとも思わなかった。でも惨めな赤ちゃんにだけはしたくなかった」
妊娠中は妊婦専門ホテヘル店で、出産後は母乳マニア向けの風俗店で働き、80万円近い収入を得たという。しかし夫のDVで離婚後、託児所付きのホテヘルやAV出演を1度だけするなどしていたが、しかし身体がだるくなり、摂食障害もあり体調を崩していく。収入が下がっても子どもに同じようにしてやりたい。生活レベルを下げられない。だが、結局は生活保護を受けことになってしまう。
様々なセックスワークの女性を見て、鈴木は貧困と風俗との関係性について「貧困であるが故の風俗ではなく、風俗に入ったが故に貧困である」と記している。そこには、貧困のなかでの格差、そして年齢、搾取などの構造的問題も大きく横たわっているという。
「風俗を利用してある程度の理想的な生活を手に入れるはずが、ある時点で風俗以外の職種に就くのが困難になったが故に、利用するどころか、いいように利用される立場へと逆転する。継続性のない経済状況はやがて破綻。選択肢の非常に少ない状態で、条件の悪い風俗店で働かざるをえないことも容易に想像がつく」
さらに、風俗で稼ぐためには、一般社会と同じような能力も求められる。
「容姿やコミュニケーション能力など、どんな職業でも高ければ高いほど重宝される条件を満たしている女性は、風俗の世界に入った途端飛躍的に高収入を得る。反面、そうしたスペックに問題のある女性が風俗に身を投じても、思うようには稼げない」
あくまで健康でお店に出られる状態なら高収入も安心した職場も得ることができるかもしれない。もちろん若くて容姿端麗ならなおさらだ。そこから生じる貧困の格差。そのためコミュニケーションや容姿に問題がある女性はさらに最貧困へのループにからめとられてしまう。風俗で働く女性といっても、貧困の度合いだけでなく彼女たちの目的、状況、収入、その心理模様は多種多様化しているといえる。