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元AV女優の社会学者・鈴木涼美が語るセックスワークと貧困…本当の貧困は風俗に入った後に

社会学者の鈴木涼美氏(『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』幻冬舎)

 AV女優として70本以上の作品に出演しながら、東大大学院を卒業し日経新聞の記者に。そして現在は社会学者。そう。昨年「週刊文春」(文藝春秋)14年10月9日号で「日経新聞記者はAV女優だった!」とスッパ抜かれた鈴木涼美のことだ。「週刊文春」報道の直後、鈴木が本サイトに寄稿した文章は大きな反響を読んだが、その後一気にメジャーになって、最近はテレビにもコメンテーターとして出演している。

 鈴木は13年の『「AV女優」の社会学』(青土社)に続き、14年11月には『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)を上梓。AVから風俗へフィールドワークの対象を広げているが、最近、「週刊東洋経済」(東洋経済社)4月11日号に寄稿した論考「女性の貧困最前線」は、ルポルタ―ジュとしても非常に興味深いものだった。

 おカネを求めてセックスワークに向う女性たち。鈴木は彼女たちの話を聞き、自らの体験とクロスさせるように筆を進める。そこから浮かび上がってくるのは、風俗で働く女性たちがおかれているのは決して「絶望的な貧困」ではないということ。だがしかし、そこには「絶望的な未来」があった。

 今春関西の大学を卒業する22歳のマキコは在学中から風俗嬢として働いていた。普通の勤め人である両親を持つ彼女は月に10万円の仕送りとアルバイトなどで20万円ほどの収入がある。しかし興味本位でホテルヘルスのバイトを始めたという。

「昼のバイトのときも生活費が足りないと思ったことはなかった。デリバリーヘルス(派遣型風俗店)やホテヘルをやっていた大学2年のときは出勤が週に1回。どうでもいい人に貢いだりしてちょこちょことおカネが足らなくなっていたから、そのときは出会い喫茶にも行く感じでした」

 同様のことを言う風俗嬢は数多いという。風俗に向かう女性は必ずしも悲惨なかたちで貧困に飲み込まれるわけではないというのだ。しかし彼女たちは風俗という仕事をすることで裕福になるわけではない。収入は倍増するがその分いろいろ散財して「やや貧困」だという。それでも彼女たちは決して「貧困の顔」はしていない。

「悲壮感なくいい条件の部屋に住み、居酒屋などで値段を気にすることなく好きなものを食べる。額面上の安定収入は10万円以下と称し、貯蓄は20万円以下。統計上の『貧困女子』は必ずしも貧困の顔をしていない」

 だがマキコは就職活動を一度もしていないという。「困ったらまた風俗にいけばいい」、そう思っているからだ。

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