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「大阪都構想」住民投票直前 特別企画

橋下徹の圧力で凍りつく在阪テレビ局の「都構想」報道…あの怪物を作り出したのは誰だ!?

 一方、会見ではほとんど質問せず、チクチクと批判記事を書く戦略の毎日新聞に対しては相当苛立っているのだろう、橋下は「便所の落書き」「便所紙そのもの」「狂ったように批判してくる」「廃刊しろ」と、自分のほうが「狂ったように」罵倒し続けている。さらに、住民投票が近づいてきた最近では、読売新聞の記事や毎日放送(MBS)の解説者にも噛みついていた。

 ただ、新聞と比べれば、テレビ局への批判はこれまで少なかった。テレビで名を売ったタレント弁護士という経歴から、ある種の仲間意識を持っているのか、あるいは、自分の弁舌を活かすには、まだまだ利用価値ありと見ているのか。新聞の単独インタビューにはほとんど応じないのに、テレビにはしょっちゅう出演し、前回記事で書いたようなCMも派手に流している。いずれにせよ、橋下はテレビに見出され、テレビを利用して「改革者」イメージを肥大させた、根っからの「テレビ政治家」なのである。

 それゆえ、テレビ局の側にも、積極的に共感や支持を口にする者が多いのだという。明らかに破綻している「都構想」について、「理論的には合っている」と評価する府政キャップ。日々行動を追いかけるうちに、「彼は口は悪いけど、よく勉強していてすごい」と心酔を隠さないディレクター。「批判ばかりではなく対案を出すべきだ」と橋下の言い分をなぞるように主張する若手記者。在阪各局の関係者を取材して回ると、そういう話がいくつも出てくる。

 ある局の報道関係者はこんなふうに分析する。

「テレビ局の社員というのは一般に、自分の能力で競争を勝ち抜いてきたという“勝ち組”意識が強いので、生活困窮者や社会的弱者に対して『自己責任だ』『努力が足りない』と切り捨てる橋下氏的な考えと、もともと共振性が高いんです。だから、彼の主張や言動に疑問を持ちにくく、『彼の言うのももっともだ』と説得されてしまうというのがまずある。
 そのうえ視聴率競争に追われていると、とりあえず数字が取れる橋下ネタはおいしいし、うまくいけば単独出演にも応じてくれる。だから嫌われたくない。記者個人としても会見で彼にやり込められるのは怖いし、ツイッターでクレームを付けられ、名前を晒されたりするのも避けたい。
 そうすると、できるだけ無難に、トラブルを起こさないように……という姿勢になっていきますよね。また、そうして求められたことだけを大過なくこなせる人間が局内で評価されるという組織の問題もある。『都構想っておかしくないか』『橋下のやり方ってどうなんや』みたいな議論なんて、局内ではまったくありません。本当に問題だと思っている人間なんて、ごく少数でしょう」

 テレビにとって、橋下は取材対象であると同時に、気脈を通じた「仲間」であり、コンテンツという「商品」でもあるわけだ。なるほど、これではまともな批判や論評など望むべくもない。

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