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仕事があるのに妊娠は無責任!? 広末の妊娠を「無計画!」という風潮に見る、マタハラの根深さ

 また、過度で一方的な気遣いがマタハラにつながることもある。某有名アパレルメーカーの販売店の店長が、妊娠した女性店員を慮って就業時間を短くしたり、残業にならないようにシフト調整をしたりしていた。ほかにも、重いものを運ぶことや長時間接客を避けてあげようと、在庫管理やバックヤードの仕事を担当してもらったところ、彼女は新人でもできるような雑用を押し付けられた。退職を促すための嫌がらせだと受けとめたという。

 店長は思いやりから彼女の業務を考えたのだろうが、雑用ともいえる裏方の仕事に回され、残業代がもらえないなどの不利益を被むれば、当事者からみれば立派なマタハラになってしまう。女性店員にとっては「一方的な配慮」ではなく、徹底した話し合いのほうがありがたかったのだろう。

 そして、本書の中で多くのページが割かれているのが、同性である女性の先輩からのプレッシャーだ。出産経験のある先輩が必ずしも、妊婦や子育て中の女性に理解があるわけではない。むしろ、今よりもっと厳しい環境のなかで出産・子育てをしてきた人は、「私の時代はもっと大変だったのに」「甘えてるんじゃないわよ!」とときに刺すような言葉で後輩を追い詰めることもある。過去の遺恨が次世代に向けられる。これもマタハラ被害の一つの露見だと言えるのではないだろうか。

 マタハラの根本的な要因は現在の日本にはびこっている、残業を前提とした長時間労働だと言われており、大手企業を中心にフレックスタイムを導入したり、会議の効率化を図ったりと制度面の対策を講じているところだ。

 それと同時に考えていきたいのは、「意欲はあっても働けない人」への意識改革だ。前述のように妊娠自体、人間がコントロールできないものである。また、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「大介護時代」へ突入すれば、多くの人が介護のために休職や退職に追い込まれることも考えられる。さらに言ってしまえば、自分自身の健康がいつ損なわれ、働けなくなるか、わかる人はいないだろう。このままでは「意思とは関係なく、働けなくなる人」ばかりが増えてしまう。これらを他人事だと思っていると、いざ自分が働けなくなったときは、自分の首を絞めることにもなり得るのだ。

 制度が不十分な時期こそ、他人への想像力が子育てや介護、病気に悩む人の助けになることもあるだろう。安易に他人を責めるのではなく、寄り添うことで、いつか自分が救われることもあるはずだ。
(江崎理生)

最終更新:2018.10.18 03:12

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