左/安倍昭恵オフィシャルサイト 右/姜尚中公式ホームページより
姜尚中といえば、そのリベラルなスタンスと「在日」の出自で、安倍首相の支持者であるネトサポ、ネトウヨたちから「反日スパイ」「チョーセンに帰れ」などと、差別的な攻撃を受けている政治学者。そんな姜と安倍首相の妻、ファーストレディの昭恵夫人が仲良くトークして、意気投合していたとしたら……。
反原発の姿勢を明確にするなど、夫とは一線を画する昭恵夫人とはいえ、まさかそこまでの取り合わせはないだろう、と思いきや、4月7日発売の女性ファッション誌「GOLD」(世界文化社)5月号で2人の対談が実現していた。
これは姜がホストをつとめる「姜尚中の奇才トーク」という連載に昭恵夫人がゲストとして登場したもの。最近も方針のちがいで聖学院大学学長を電撃辞任するなど、ぶれない信念をもつ人気学者と、タカ派丸出しの夫に堂々と異を唱えるファーストレディの対談で何が飛び出すのか、興味津々で読んでみた。
冒頭、「僕は政治的には安倍首相とはかなり対極的で……」という姜に対し、「私も家庭内野党と言われているぐらいなので(笑)」と答える昭恵夫人だが、今回の対談のテーマは政治ではなく日本の食だという。昭恵夫人は1年半ほど前の2013年10月、世界文化社から『安倍昭恵の日本のおいしいものを届けたい! 私がUZUを始めた理由』を刊行しており、その縁での登場と思われる。だがしかしこの2人の組み合わせで、話は当然のように政治的話題へ、そして東アジア情勢へと向かっていく。
まずは東日本大震災と原発だ。以前から自給自足に興味があったという昭恵夫人だが、それは大震災後、「自給自足が一番大事」という確信に変わったという。
「その直後、コンビニからあっという間に物が消えましたね。(略)スーパーからも、納豆がないとか、水などがなくなって、入荷しても、一人何本しか買ってはいけない、と制限されましたね。(略)都会だと、お野菜をつくっている農地が近くにあるわけでも、家畜をそばで飼っているわけでもないので、流通が途絶えると食べ物がなくなる。都会というのは、すごくもろいものなんだなと肌で感じたんですよね」
こうした流れで話題は原発になるのだが、「昭恵さんはどちらかというと原発はやめたほうがいい、と今でも思っていますか」と水を向ける姜に対し、昭恵夫人は福島の今の放射線量自体は問題ないと思っていると前置きしつつ、こんなエピソードを披露する。
「ただ、原発事故が起きてしまった後の対処を見ていると、人と人が分断されてしまうことにすごく大きな問題があると思うんです。山口県の上関町も、原発をつくる、つくらない、で分かれていて、私は反対派の象徴となっている祝島に、エネルギー学者の飯田哲也さんと一緒に出かけたこともあります」