だが、考えなくてはいけないのは、イスラム教徒への影響だ。愛知県のイスラム礼拝所には、「日本から出て行け」「家族構成は分かっている」「殺す」「日本人の敵だ」などという脅迫や嫌がらせの電話が相次いでいることを毎日新聞(2月5日付)が伝えているが、こうした行動が「イスラム国」という言葉の意味を誤解し、「イスラム国=イスラム教徒」と誤って解釈していることが原因で行われている可能性はある。あまりに短絡的すぎないか、という疑問もあるが、それよりも、このような暴力が罪のない人たちにおよぶことは防がなくてはいけない。
しかし、それは単純に言葉を置き換えたら済む問題なのだろうか。「テロに屈しない」と安倍首相は繰り返すが、その前にわたしたちが行わなくてはいけないのは、ムスリムに対する理解を深めることではないか。この1か月間、フランスでの「シャルリー・エブド」襲撃に日本人人質拘束と大きな事件を目のあたりにして、極東の島国に住むわたしたちは、理解が追いつかず、圧倒され、スピードに流され、立ち尽くすばかりだ。
考えなくてはいけないことは山ほどある。移民にひときわ厳しいフランスで、ムスリムたちはシャルリーの風刺をどう捉えていたのか? 「イスラム国」という過激派組織に世界中の若者たちが賛同する原因には、各国の欺瞞が隠されていないか? そもそも「イスラム国」をつくりあげてしまったアメリカの中東政策を日本はどう見つめ直せるのか? ……こうしたことをひとつひとつ考えていくには、中東とその民族の歴史、イスラム教への深い理解が必要だ。
必要だ、と偉そうに言いながら、筆者自身、いまだ右往左往している。だが今後、中東と日本のこれからを考えていく上で必要な知識を掬い、伝え、広げていくことも、本サイトの重要な課題であることに違いはない。前述したように、過激で残忍なテロ集団であるというイメージをもっとも多くの人が抱いている「イスラム国」という呼称を本サイトでは使用していくつもりだが、これもまた、編集部でその都度検討し、あらためる機会も出てくると思う。
ただ、いま日本に起こっていることは、ありえないほど恐ろしい事態だ。テロという恐怖を国民に煽り、責任から逃れようとする安倍政権。そして、政権に都合の悪いことは口をつぐみ、人質事件の真実追及さえ行わない翼賛的な報道。──本サイトではこうした状況に抗い、隠されようとしている事実を暴いていきたいと考えているが、この国で異常な事態が進行していることだけは、ひとりでも多くの読者にしっかりとわかってほしいと願っている。
(編集子)
【検証!イスラム国人質事件シリーズはこちらから→(リンク)】
最終更新:2017.12.13 09:18