にもかかわらず、田母神はその関係を問いただされると逃げ回り、事務所も「コメントを出す予定はない。田母神にも取り次がない」と対応。マスコミの取材が激しくなり、ようやくTwitterでコメントを発表したが、それはにべもないものだった。
「シリアでイスラム過激派に拘束された湯浅春菜氏がフェイスブックで田母神とのツーショットを載せているということで、本日は私にマスコミなどから20回以上湯浅氏との交友関係について問い合わせがあった。彼との写真は私が何千人かと撮った写真の一枚です。いつ彼に会ったのかも覚えておりません。」
「まだマスコミの皆さんからの電話が続いています。私は湯浅氏とは全く面識がありませんのでコメントのしようがありません。マスコミの皆さん、よろしく。」(原文ママ)
もし湯川さんと会ったときの記憶が田母神になかったとしても、ツーショット写真まで撮り、後援会まで手伝ってくれた人に対して、この言いざま。しかもその人が過激派集団に拘束されて命の危機に瀕しているのだから、安否を気遣う言葉くらいあってもいいだろう。なのに田母神は知らぬ存ぜぬの一点張り。挙げ句、名前を「湯浅春菜」と間違えている。ただたんにニュースに疎いのか、それとも“そんな人知らない”アピールのつもりだったのか……どちらにせよ、田母神には血も涙もないことがよくわかる。
著書では威勢よく「自分のことより国家や国民のことを優先する」「トラブルに巻き込まれた時は、私の力の及ぶかぎり、最終的には直接大臣と掛け合ってでも皆さんを守る」などと信念を掲げてきた田母神だが、いざとなるとこの有り様。今回のTwitter発言にしても、自分を信奉してくれた湯川さんが殺害されてしまったかもしれないのだから、何か一言あってしかるべきだ。だが、もちろんそれすらなく、このような非常事態に後藤さんと母親の国籍をもち出して責めるばかり。田母神にとっては、人命よりも国籍のほうがずっと重要なのだろう。
命をこんなに軽く捉える人間が、防衛省で航空幕僚長をやっていたなんて……つくづく背筋が凍るような話である。
(水井多賀子)
最終更新:2017.12.09 05:13