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月収15万円!“陸の蟹工船”東京のタクシー運転手が抱える悲惨な実態

 まず「Gカラー控除」とは何か。これは、黒塗りのハイグレード車で仕事をした際、1回の業務につき150円を運転手が負担するというもの。負担の根拠は「ハイグレード車の車両価格がスタンダード車よりも高いので、その差額の一部を運転手が負担する」だという。会社が所有しているはずの車の代金を、なぜだか運転手が負担しているのだ。

「無線控除」は、「無線配車を受けたら、その回数にかかわらず一業務につき300円」というもの。これもまた名目としては無線設備の費用の一部を運転手が負担していることとなる。

 そして「クレジット」は、クレジットカードでの支払いの5%を手数料として負担するというものだ。クレジット会社に支払う手数料は3%なので、運転手は2%を余計に払っていることとなる。そもそもクレジットの手数料を運転手が負担するのもおかしいが、さらに2%を上乗せし、ここでもまた設備費用を負担させるというのだ。

 普通の会社なら、設備投資を社員に負担させるなどということはあまり聞かないが、タクシー業界ではこれが当たり前となっている。タクシー業界がいかに運転手に負荷をかけたうえで成立しているかがわかる。

 そんな厳しい状況の中、タクシー運転手たちはできるだけ多くの客を乗せようと争奪戦を繰り返すこととなる。

 矢貫氏いわく、かつてはタクシー運転手の間の不文律として「道路の反対側で客が手を上げていてもUターンはしない、自分が空車で走っている場合、前を走る空車を抜かない、抜いてしまったらそのまま右車線を走り去る」といったものがあったという。しかし、今は「客を乗せるためなら何でもあり」という状況なのだ。空車同士が客を取り合って強引に割り込むことや、「回送」を表示しておいてライバルの空車を出し抜く運転手もいて、ルール無用の状態らしい。

 そういった客の争奪戦を繰り返した結果、発生するのが事故だ。国土交通省が毎年発表している「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書」によると、タクシーの走行距離1億kmあたりの事故件数を空車時と実車時で比較すると、空車時のほうが実車時より2.4~3倍ほど多い。“乗客の争奪戦”がどれほど危険なものであるかが理解できるだろう。

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