「市民団体を名乗った請求者は、JR総連の献金実態を調べたかったのでしょう。しかし、開示請求から2カ月たっても違法性のある献金は出てこない。逆に、田城氏が事務所内の横領事件を自ら暴いて浄化させるきっかけになったという皮肉な結果になっている」
まさに安倍首相としては恥をかいただけに終わったわけだが、それにしてもいったいなぜ、ここまでJR総連にこだわっているのか。
JR総連はたしかに内部的には非組合員へのいじめや嫌がらせなどの問題を抱えているが、革マル派との関係については前述したようにもはや形骸化しているとの見方が根強い。また、関係があるとしても、いまや新左翼セクトなんて風前の灯火。そんなものを針小棒大に騒ぎ立てているのは、新左翼対策の予算を死守したい公安警察くらいのものだろう。
「安倍さんはその公安にすっかり洗脳されているんだよ」
と話すのは、ベテラン政治ジャーナリストだ。実は今、安倍首相が今井尚哉首相秘書官に次いで頻繁に会っているのは、そのJR総連問題を熱心にかぎまわっていた内閣情報調査室のトップ・北村滋内閣情報官なのだという。
「北村氏は警察庁の公安出身で、第一次安倍政権の時の首相秘書官をつとめていた。その頃から安倍首相のおぼえめでたく、日本版NSC立ち上げにも深く関わっている。第二次安倍政権の内閣情報官になってからはもっと関係が緊密になって、ほぼ毎日、日によっては何回も呼び出されて会っている。官僚の職分を超えて、側近中の側近になっていると言っていい。安倍首相はもともと左翼陰謀論のようなものが大好きだが、公安出身の北村氏にありもしない新左翼の脅威みたいなものを吹き込まれて、どんどん、民主党が革マルに操られているみたいなことを信じ込んでいるんだろう」
さらにもうひとつ囁かれているのが、安倍首相の有力ブレーンのJR東海の葛西敬之名誉会長の影響だ。周知のように、JR東海とJR東日本は民営化の際の縄張り争以来、犬猿の仲の状態で、一連のJR総連=革マル説などもJR東海サイドからマスコミに流れているケースも多いという。
「松崎元委員長の死去でJR総連の力が弱まっている今、安倍首相と葛西名誉会長が“JR東日本の健全化“という名目で切り崩しを画策しているという見方もあります」(JR関係者)
内閣情報調査室=公安を使った政敵潰しと陰謀論による組合追い落とし。冗談ではなく、日本はそのうち秘密警察が牛耳る国家になってしまうかもしれない。
(野尻民夫)
最終更新:2017.12.09 12:05